前に話してた様に、私がお世話になっていた病室は4人部屋でした。
その中で車椅子を使って、自由にトイレに行き来できるのは私1人だけで、
他の皆は車椅子への移乗さえ自分1人の力ではできない有様でした。
その4人部屋の、出入口から入って左側すぐのスペースを占めているのは、70後半から80歳台とおぼしき年頃のジジイ……
いや、男性の患者で、これがジジイと悪態をつきたくなる様な、まことに結構な人物でした。
と、年齢をたてにジジイよばわりするのは差しさわりがあるかも、
なので私自身の年恰好から自虐ネタにオッさんと称することにしておきます。
オッさんは看護師のみなさんの手をやかせるのは日常茶飯事ですが、一番目につくのは、そのえらそうな口ぶりでした。
そういう人物に決まって看護師では看護婦といいたがるのはお決まりで、なにかというと、
「おい!看護婦、〜をもってこい」
「〜はまだか!遅いやんけ」……
その割にはお医者様には、それなりに丁寧な口ぶりで話をするのです。
察するに年若い女性に、アレやこれやと指示をされるのはおもしろくない、
自尊心を傷つけられるのかなぁ、と想像されるのでした。
また、時間帯に構わず大きな音でテレビを鳴らすのは、
21:00には就寝し、早起きしてリハビリをする習慣の私に本当に迷惑この上ない。
イヤホンを使う様にと、看護師の皆さんに幾度も注意されても、
「なにヌかしとんじゃ、そんなデッカい音だしてない、ちゅうんじゃ」
…終いにはサジを投げられる有様でした。
結局、お医者の先生に叱られて夜中にイヤホンを使わないでテレビを観るのは諦めざるを得ない様でしたが、、
………………………………………………
さて、私がしっぺ返し…殊更にしっぺ返しをたくらんだわけではありませんが、
たまたま経緯から私がしたことがオッさんに気の毒なことになってしまいました。
先にも話した様に4人のなかで私1人が車椅子を使って自由に使えるので、部屋の空調も自由に調整できるのでした。
空調の調整板は出入口の脇の壁面に設置してあるので、私のスペースからは多少、面倒ですが、
私1人の好き勝手に自由に調整できるのをいいことに、ちょっと暑くなれば温度調整を低いメに、
逆に寒くなれば暖かいメという具合に好き放題に調整していました。
それで寒いの暑いのと他の患者や見舞客からクレームが出なかったのですから、
まぁまぁ私の体感温度は人並みな感じであったと思います。
ところがクレームといえばオッさん1人が
「寒いやんけ、何とかせえや」
と看護師を呼びつけてクレームを言い立てるのです。
年齢が年齢だから寒いのかも?ちょっと温度調整を高いメにしてあげんといかんかなぁと思っていると、
その時、はじめて気がついたのですが、オッさんのスペースの真上にエアコンの吹き出し口があり、
オッさんのベッドの設置位置が温風、冷風をまともに受けるのです。
クレームを聴いた看護師は
「なに云うてんの、これ以上、暑ぅできるかぃな」
とにべもない対応を見せて、さっさとナースセンターに引き揚げてしまうのでした。
ただでさえ多忙な彼女ら彼らからすれば、夕刻のもっとも忙しい身で、
おそらくバタバタと暑くしていたであろうに、呼びつけられて行けば、これで寒い?
しょうもない用事で呼びつけやがって!
想像するに何時もエラそうな態度でなにやかにやとヤられて、
無意識に、他の患者を相手するのとは違って腹立たしく思われたのではないかと。
私からすれば、
ほぅ…これはよいわ、多少、寒いくらいどぅいうこともないな。
暑けりゃどうしょうもないが、寒いなら何か重ね着すればいいことじゃないか…
それからというものの、ちょっと気温が低いぐらい斟酌しないことにしました。