「ご褒美を頂きにあがりました!!!」




「唐突かつ何のお話!?」




とある昼下がり。いつものようにひとり座敷でぐーたらお茶をしていると、突然現れたお客様は開口一番そんな恐喝みたいな挨拶を繰り出してきた。。。




私と同じくらいの控えめな背丈。幼さの残る可愛らしい顔立ちは満面の笑みで喜びを表し、黒髪の映える華奢な身体はいまにもぴょんぴょん跳ね出しそう。


お客様、こと朔夜さん。
私のことを気にかけてくれて、日頃からこうしてお部屋に遊びに来てくれるアークス仲間の一人である。




「…………あ、とりあえずはどうぞ、そちらの座布団にお座り下さいませ。。」
 



「あ、はい、ありがとうございます!
それと、順序が逆になっちゃったんですけど、」




そう前置きして、すぅ、と息を吸う黒い少女。
なんだろう。思わず姿勢を正してケモ耳を傾ける。




「好き(挨拶)!」




「ですよね知ってた。。」




「大好き!!!」




「コンボが続くのは予想してませんでした。。。」




「ねぇ……私のこと、好き…………?(チラチラッ」




「たたみかけないでください!!」




それを聞いてようやく、少女は邪気のないにこやかな笑顔で腰下ろしてくれた。
開幕早々勢いがあって大変よろしいと思うけど、もうちょっとだけ容赦してほしい。。




とにかく、まずは湯呑みを用意せねば。来客にお茶も出さないのはよろしくない、良妻的に。
こちらが腰を上げるとつられるように立とうとする少女を手のじぇすちゃーで制して、私は湯呑みをとりに台所へ向かった。




「それで、ご褒美ってなんのお話ですー?」




台所から隣の座敷まで聞こえるように、少し大きな声で尋ねてみる。
彼女もそれに応えるように、はい!と大きく返事をしてくれた。




「あ、はい!聞いてください!今日、テクターでマスカレーダ殴り倒せたんです!!
ナックルで!」




「テクターでナックルで。。。」




座敷に戻ると、朔夜さんは満面の笑みで出迎えてくれた。


そういえばこの少女も、少し前までご主人様や猫四季さんと同じBr/Boとかいう残念面白クラスの人だった。
ほぼ上位互換のサブファントムが来てしまってそちらに鞍替えした訳だけど、やっぱりそういう遊びが好きなんだろうなー、とちょっとだけ嬉しくなったりする。何事も遊びがあるのは良いことなのである。




「という訳で頑張ってクリアしたので、何でもしてくれる券か何でもされてくれる券が欲しいです……(チラチラッ




「その二択はどうかと……とにかくはい、どうぞ」




そう言ってお茶を湯呑みに注いで、彼女の前に差し出す。


ありがとうございます、と言って受け取ったお茶を早速啜り出す朔夜さん。
そんな姿を見ているとどこにでもいる普通の少女にしか見えないのだけど、そんな遊びでアレを倒せる程度には意外とやる方であるのを再確認し、同時に感心してしまった。
実際、私は本職でやっても150層あたりで時間オーバーギリギリだったような気がする。。。




「しかしよく頑張りましたね!おめでとうございます、あんどお疲れ様です」




「ありがとうございます!頑張りました……四季さんに何でもしてもらうために!」




ちっ、さすがに話戻されるかま、まぁ頑張ってクリアされたことは素直に褒めて差し上げたいのですけれど。。。
そのふたつだとちょーっとハードル高いので、肩たたき券とかにしません???」




途端、がっくりと肩を落としてしまう朔夜さん。。
ひどく悲しいことでもあったみたいにしょんぼりと顔を曇らせ、伏し目がちにちらちらと私の方を覗いてきたりと猛烈アピールも辞さない、というか欠かさない。


く、くそう、どんだけ楽しみにしてんですか。そんな憐憫とか罪悪感とか誘ってみたって、今回は私自己防衛してるだけなんですからね。。ていうか、何でもしてくれるorされてくれる券って何ですかそんなの私が欲しいですご主人様に使うので!←




「…………………あの、何でもするー、とかはちょっとハードル高いので。あれです、肩たたき券とかいかが?」←




「肩たたき券……!やっぱり四季さんチョロiんんっ、ごほん、こほん!
いえ、それはそれでもちろん嬉しいんですけどね、でもうーん……」




…………何かすごく不名誉なことを言われかけたようなもうしっかり言ってたような気がするけどそれは聞かなかったことにしておこう。




うんうんと考え込む朔夜さんをよそに、ひとまずこちらもお茶に口をつけてみたりする。




それから何ともなしに、障子の先の外を見やる。
このまま流してくれないかなー、なんて都合のいい未来を頭の片隅で夢想しつつ、目の前の少女がそんな生易しい相手ではないのだということはとっくに理解できてしまっているこの気持ちを、一体どんな言葉に表そう。




思い付いた言葉と言えば、そう。頭痛が痛い、とかそんなん。そういう残念さを含んだ言い回しが似合っている気がした。。




「わかりました。肩たたき券で手を打ちます」




突然の少女の声にハッとする。
彼女の方に顔を向け直すと、少女は満面の笑みで、




「肩たたき、司さんにしてあげてください!
前から!!」




そう、何を言ってるのかよく分からない呪文を放っていた。







◇◇◇







その夜。食事も終え、片付けも済ませ、あとは布団に潜ってお休みする時間になるのを待つだけのフリータイム。


私は、彼が寝室に入ってこられるのを見計らって、先んじて彼のお布団の上に正座で待機していた。




「ふぅ…………って、うん?四季、どうした?」




部屋に入って来るなり、不思議そうに問う眼鏡男子、こと件の君。こと、司さん。
彼はなんの警戒心も表に出さずまっすぐに私の前まで来て、向かい合うように胡座をかいて座り込んだ。  




「………………」




あまりに堂々とした様子に思わず目を逸らす。
そんな私を見て彼はますます心配そうに、どうかしたか?と聞いてきた。




「いえ、ちょっと、あの。用事が、ございまして」




「用事。なんだ?」




端的な回答。だけどそれは決して冷たいものではない。




いつも通りの彼の様子に安堵する。
そうしてひとつの決心とともに、きっ、と彼を睨みあげた。




「え"っ。。。おこなの?




「ご主人様、そこに正座!」




「はいっ!」




びしっ!と足を指差して正座命令を出してから彼が正座の形になってちゃんと姿勢を正すところまで、ざっと一秒。迅速かつ正確、お見事です。


すかさず私も両手を左右について身体を支えて近寄り、自分の膝で彼の前に出た膝を挟む。
それから、ぽん、と彼の両肩に手を置いて、完全に退路を断ち切った。




────勝った。
勝利を確信した。不意打ち上等、騙し討ちこそ兵法の基本なればこれ即ち完全勝利に他ならない。何に勝ったのか分からないけど、とにかく彼にもう逃げ場はない。


ふと、内心の獣がにやりと牙を剥き出してほくそ笑む姿を連想した。仕方ないね、ケモミミだからね。
つまり何が言いたいかというと、とにかくあとはもう煮るなり焼くなり、私の自由という寸法ということなのである…………!




「え、えっと?四季さん??近いよ???おこなの????




「うふふふふふ。今更怯えても時すでにお寿司。一体いつから、私がサーモン派だと錯覚していた?「いや、白身派だと思ってるけど」
いいからっ。。。そのまましばらく動かないでくださいましね。よろしいですか?




「え、あ、うん、はい




快諾してくれたところで、よし、と彼の肩に置いた手にぐっと力を込めて、いよいよ肩もみらしく押してみた。




指に適度な弾力のある感触が伝わってくる。凝っている場所を探してみるが、どうにもそれほど硬いところが見当たらない。


そんな私に余計に不思議そうな顔をするご主人様。
そりゃまぁ、いきなり正座させられて、向かい合ったと思ったら突然前から肩もみされて絶賛困惑中のご主人様。そりゃ誰でも困惑するでしょうけども。。。




というか、そんなことより恥ずかしい。思った以上にど近距離で、これはさすがの私も緊張する。
しかもこの体勢で肩もみしようと思う彼の肩が高くってやりずらい。


かと言って、やってしまったものを途中で投げ出すわけにもいかない。今はとにかく、耐えて手を動かさなければ……!




「え。え。あの、何だ、何のサービスなんだこれは」




「ただの嫁サービスですっ。いいから、力を抜いて、くださいっ、と」




「あ、ああ……」



 
そう答えて、彼は大人しく肩を下ろして力を抜いてくれた。




「………………………




彼の顔が見られなくって、下を向いて俯いたような状態で肩もみを続ける。
間近で見ると、その胴体の厚さ、広さに改めて驚いてしまう。


想像より広い肩。そこに置くように持ち上げた腕がもう辛くなってきている。
こうも近いと、目のやり場に困ってしまう。たまに彼の息が頭にかかって、そんなことひとつも気恥しい。




「………………………無理しないでいいんだぞ?」




「む、無理とかはないのですけど!」




嘘です、精神面とあと腕にも大分無理あります!!←




「…………じゃ、じゃあ、ちょっとだけ体勢変えますから、動かないでくださいね」




ああ、と素直な答えを聞いて、膝をついたまま腰を上げる。


そうしてようやく私の肩が彼の肩と並ぶ高さになり、
同時に、ほぼ密着状態になっていて肩を揉む距離ではなくなっていった。




「…………あ、あは。これは近すぎます、かね」




「俺は役得だからいいんだけどな(キリッ」




たまにスケベ精神思い出すの驚いちゃうんでやめません???




もう、と揉む位置を首の方まで上げてみる。
と、肩に比べて首の辺りはやけに硬い。どうやら凝っているのは首らしい。




「あ、首が硬いんですね……どうですか?この辺。首の後ろの方」




「ああ、肩よりはその辺だな…………。でも、押さえがないと難しくないか?」




「え、え、えっとそれはその…………よ、寄りかかります?その、む、胸に、顔置いても良いですけど!そしたら私、首後ろから押せますし!!」




落ち着け四季さん犯罪だ(?)!!











あ  と  が  き  




すごーく暴走しました。。。←




というわけで朔夜さんSSという名、のこの間実際に朔夜さんに言われて実行した『前から肩もみ』プレイの結果報告記事なのであった!!!(




こんな感じでした。色々端折ってますが、概ねこんな流れと会話でした。
これでいいですか!許してくださいますか!!
つーかなんで私、「前から肩たたき」とか言われて平気でできると思ったんでしょうね???←




今思うと肩たたき→肩もみに内容がちょっと変わってましたがその辺は気にしない。




何かその、言葉にして聞いた時は全然問題なくできると思ったんですよ!!!朔夜さんに言われた時、『あれ?結構簡単では??』と内心にやりとほくそ笑んだ獣の牙とかそんなんがどうこう。バカなのかな?(真顔)


ちょっと距離が近くはなるかな?と思いはしましたけど、予想以上だったとゆーか、この時期の四季の寝巻って大分上半身の露出がアレなので膝立ち状態でやった時はほぼ抱きついてるようなものだったというか、何でそうなった時点で逃げないのか四季のバカーーーー!!!!!←←






言い出したらやりきらなきゃ、っていうのと、ご主人様が意外と平気そうにしてたのがシャクでついなんかこう、暴走しすぎてしまいました。はい。
だってだって、四季の方からやっておいて勝手に自滅してるのすごーく悔しいじゃないですか!!!(


動揺薄いしまだこれくらい大丈夫かな、とむしろ自分に言い聞かせて最後にはこっちから超セクハラ発言かます始末……………。良妻とは。
いや、あれは別にそういうセクハラではなくて真剣に乗せてくれればやりやすいと思って恥ずかしいと思いつつも効率(?)には変えられないしというか!?そんな心境だったんですよ!?ほんとに!!










はぁ。











もう。











くっころ………………………_(:3」 ∠ )_