窓の外に広がる景色は、一言で言うと白かった。
「……良い感じに……」
降っているなぁ、と。
知らず漏れだしたのはそんな独り言。
ゆらゆらと。それともはらはらと、とでも形容しようか。
物量的にはざあざあと、とか言ってしまいたいところだけど、それはなんだかおかしいし。
とにかく窓の向こう側には、昨今稀に見る勢いで雪が降りだしていたのだった。
家々の屋根に敷かれた真っ白い絨毯は、まるで元からそうであったみたいに自然な形に整っている。
道にははしゃぐ子供と、わざとらしく踏み抜いた小さな足跡。
道路の方は絶え間なく車が通るからか、水しぶきをあげながらも機能しているようでほっとした。
ふと、振り返って部屋を見渡す。
目に留まったのは冬の味方……いや冬の悪魔ことコタツさんと、その上に置かれた飲みかけの白湯。
……その誰もいない部屋の真ん中目掛けて、ほう、と。
静けさを押し出すように大きく息を吐き出して、ほんのちょっとむなしいような、笑えるような。
……いや、空しくはならないか。
『ここに彼がいたら』を想像したら温かくなれたので、やっぱり今のは笑えるところだったらしい。
雪の強い日には、思い出がある。
私のワガママに彼を付き合わせてしまった、ちょっと恥ずかしいような嬉しいような思い出。
内容は割愛するけれど、彼の付き合いの良さに私がコロッといかされそうになった系のお花畑なお話だ。。。
あの時感じた気持ちに今も安心する。
それとあの時から変わらない気持ちにもうひとつ。
そして、あれ以来変わらない私の気持ちは確かな足場となっている。
それを思い返させるこの白い景色も、きっと夜には降り止んでいるだろう。積もった景色もそれはそれで見物だろうか。
儚い雪は私の心を表すように。
いや、だからこそこういう強い雪の日に。
いずれは溶けて消える物と知っていても、それで今が無意味になるわけではないのだから。
思い返せる思い出がある。
それで温まる気持ちがあって、固まる決意がある。
……なんて、贅沢。
贅沢すぎて、私には不相応だろう、と戒めたくなる気持ちが沸いてしまうくらい。
だけど今だけは許してほしい。
彼が帰って来られるまで、このまま思い出に浸っていることを許して貰いたい。
……そうか。雪の強い日には、私はワガママになるのか。
変な味を覚えてしまったな、と自嘲気味な笑みがこぼれたけど、気持ちはやけに満たされていた。
「ただいま」
日付も変わろうという頃。いつもよりご機嫌そうな弾んだ声で、彼は私のいる居間の戸を開けた。
「おかe「雪すごいぞ、見たか?」
聞いちゃいねぇ。。。
「……お帰りなさいませ。ふふ、そうですね。ベランダの取手に雪ウサギ作って遊びましたとも、はい」
「なにそれ見たい」
手で『アレです』と窓の方を指すと、彼はやたらと楽しそうに窓を開けてうっひゃぁう寒いですね外の空気!?
「…………あー、なるほどウサギか……」
「あ、言われなきゃ解らないーとか、言われてもやっぱり解らないーとかそーいう苦情は間に合ってますからね♪」
「い、いや解らない……でもないから安心してくれ、うん。。。」
「言葉を選んだようで全然選んでませんね???」
ちょっと、とむっとしてにらみ上げると、彼は苦笑いで目をそらしてしまう。
むー。ウサギだと思うんだけどなー。。。
そのやり取りがちょっと可笑しくって、寒い風に当たりながら二人でくすくすと笑いあう。
「……夕飯の用意ってしてくれてるか?」
窓を閉めるなりされた不意の質問は、ある種の決まり文句。
「はい、お鍋のつもりでしたが」
どうされますか、と覗き込むようにして見上げてみる。
実のところ、そう来ると思ってまだ準備らしいことはしていなかったのだ←
すると彼は、今度は目をそらすこともなく堂々とこちらに目をあわせてきて、
「外、歩かないか。お前さえよければ」
何かの決意でも秘めたかのような、力強い目線だった。
思わずこっちが目をそらす。
まったく、距離が近いときにそう堂々とされるのは困ってしまう。何ていうか、女として負けた気がするので。。。
「……少しだけ、お時間下さい」
「ありがとな」
そう言って頭の上に手を乗っけられそうになって、
ささっとナックルの武器アクションばりに避けてみた←
「なん…………だと…………?」
「てゆーか寒いですよ?ご無理ありません?」←切り替え速い
「俺は平気だよ。バカをするのは嫌いじゃないんだ」←速い
「……一応お尋ねしちゃうんですけど、それ、四季の影響じゃありませんよね??」
「いやー、それはないな。俺の方がその辺バカだと自負してるね」
いやー、それもどうかと。。。
「……良い感じに……」
降っているなぁ、と。
知らず漏れだしたのはそんな独り言。
ゆらゆらと。それともはらはらと、とでも形容しようか。
物量的にはざあざあと、とか言ってしまいたいところだけど、それはなんだかおかしいし。
とにかく窓の向こう側には、昨今稀に見る勢いで雪が降りだしていたのだった。
家々の屋根に敷かれた真っ白い絨毯は、まるで元からそうであったみたいに自然な形に整っている。
道にははしゃぐ子供と、わざとらしく踏み抜いた小さな足跡。
道路の方は絶え間なく車が通るからか、水しぶきをあげながらも機能しているようでほっとした。
ふと、振り返って部屋を見渡す。
目に留まったのは冬の味方……いや冬の悪魔ことコタツさんと、その上に置かれた飲みかけの白湯。
……その誰もいない部屋の真ん中目掛けて、ほう、と。
静けさを押し出すように大きく息を吐き出して、ほんのちょっとむなしいような、笑えるような。
……いや、空しくはならないか。
『ここに彼がいたら』を想像したら温かくなれたので、やっぱり今のは笑えるところだったらしい。
雪の強い日には、思い出がある。
私のワガママに彼を付き合わせてしまった、ちょっと恥ずかしいような嬉しいような思い出。
内容は割愛するけれど、彼の付き合いの良さに私がコロッといかされそうになった系のお花畑なお話だ。。。
あの時感じた気持ちに今も安心する。
それとあの時から変わらない気持ちにもうひとつ。
そして、あれ以来変わらない私の気持ちは確かな足場となっている。
それを思い返させるこの白い景色も、きっと夜には降り止んでいるだろう。積もった景色もそれはそれで見物だろうか。
儚い雪は私の心を表すように。
いや、だからこそこういう強い雪の日に。
いずれは溶けて消える物と知っていても、それで今が無意味になるわけではないのだから。
思い返せる思い出がある。
それで温まる気持ちがあって、固まる決意がある。
……なんて、贅沢。
贅沢すぎて、私には不相応だろう、と戒めたくなる気持ちが沸いてしまうくらい。
だけど今だけは許してほしい。
彼が帰って来られるまで、このまま思い出に浸っていることを許して貰いたい。
……そうか。雪の強い日には、私はワガママになるのか。
変な味を覚えてしまったな、と自嘲気味な笑みがこぼれたけど、気持ちはやけに満たされていた。
「ただいま」
日付も変わろうという頃。いつもよりご機嫌そうな弾んだ声で、彼は私のいる居間の戸を開けた。
「おかe「雪すごいぞ、見たか?」
聞いちゃいねぇ。。。
「……お帰りなさいませ。ふふ、そうですね。ベランダの取手に雪ウサギ作って遊びましたとも、はい」
「なにそれ見たい」
手で『アレです』と窓の方を指すと、彼はやたらと楽しそうに窓を開けてうっひゃぁう寒いですね外の空気!?
「…………あー、なるほどウサギか……」
「あ、言われなきゃ解らないーとか、言われてもやっぱり解らないーとかそーいう苦情は間に合ってますからね♪」
「い、いや解らない……でもないから安心してくれ、うん。。。」
「言葉を選んだようで全然選んでませんね???」
ちょっと、とむっとしてにらみ上げると、彼は苦笑いで目をそらしてしまう。
むー。ウサギだと思うんだけどなー。。。
そのやり取りがちょっと可笑しくって、寒い風に当たりながら二人でくすくすと笑いあう。
「……夕飯の用意ってしてくれてるか?」
窓を閉めるなりされた不意の質問は、ある種の決まり文句。
「はい、お鍋のつもりでしたが」
どうされますか、と覗き込むようにして見上げてみる。
実のところ、そう来ると思ってまだ準備らしいことはしていなかったのだ←
すると彼は、今度は目をそらすこともなく堂々とこちらに目をあわせてきて、
「外、歩かないか。お前さえよければ」
何かの決意でも秘めたかのような、力強い目線だった。
思わずこっちが目をそらす。
まったく、距離が近いときにそう堂々とされるのは困ってしまう。何ていうか、女として負けた気がするので。。。
「……少しだけ、お時間下さい」
「ありがとな」
そう言って頭の上に手を乗っけられそうになって、
ささっとナックルの武器アクションばりに避けてみた←
「なん…………だと…………?」
「てゆーか寒いですよ?ご無理ありません?」←切り替え速い
「俺は平気だよ。バカをするのは嫌いじゃないんだ」←速い
「……一応お尋ねしちゃうんですけど、それ、四季の影響じゃありませんよね??」
「いやー、それはないな。俺の方がその辺バカだと自負してるね」
いやー、それもどうかと。。。