「ソロ花への勝利を誓って!」




「えっ???あ、うんはい。」




「乾杯、です。」




「乾杯。」




こん、と。プラスチックの安っぽい音が部屋に沈んだ。











喉を通せば、まるでジュースみたいな飲みやすさ。




その中にちょこっとだけ香るアルコールの雰囲気。
あー、これは酔えるお酒だな、と一時間後の自分の姿が見えた気がした。




「うまいか?」




升をテーブルに置いたのを見計らったように、彼は相変わらずのどっちともとれない棒読みめいた口調で私に問う。




ふむ、と思案顔で言葉を探す。
が、まだそれほど酔っぱらってはいないけど、それでもふわりと頭を揺らすものがあって、スムーズに頭が回らなかった。




「四季は好きですよ、梅酒。
こう気安いお酒だと畏まらなくていっかなーって思っちゃって、どうにもぐいぐい飲みすぎちゃいますね。。」




彼は、そうか、とだけ返事をして、習うようにぐいっと升を傾けてお酒をあおりだした。




ちなみに、この梅酒の前によく解らないアルコール飲料を一瓶空にしている。
誰とも知らないお方からの頂き物だったのであしらうように飲んでしまったが、量としてはそこそこあったと思う。




気安いお酒に、よく解らないお酒。




お酒の席には色々考えたがる四季だけど、今日ばかりは信条を捨てることにした。




やけ酒、ではないけれど。煽り酒とでも言ったところか。
そういうノリで行くことにしたのだ。




「ご主人様のご感想は?
最近お酒を飲みに行かれることも多いですし、この手のお酒も慣れちゃいました?」




「俺は飲みに行っても日本酒しか飲まないからなぁ。
いや、その、最近悪い。色々と事情が重なってと言いますか……」




「い、いえいえいえいえ!そういうつもりじゃなかったのですが!」




ぶんぶんと勢いよく手と頭を振ってるとすぐにくらくらしてきて、やはり少しは酔っているらしいと思い直した。←








少し前は、こうしてお酒を頂くことなんてほとんどなかった。




こういう席を用意するようになったのはいつからだろうか。それこそ去年、あるいは一昨年。そのくらいか。


四季はずっと前からお酒は好きだし、お酒を頂く事へのこだわりも変わっていない。
変わったことがあるとしたら、それはご主人様の方にあるのだろう。




それが成長なのか、ただの気紛れなのか。
それとも、少しは距離が縮まったとか思っても良いのだろうか。
まだ解らないことではあるけれど、彼が停滞していないことは喜ばしい。




人間、変わり続けてこそだろう。
それが良しか悪しかは、後で決めれば良い話。






「ソロ花難しいなー……新和風の弓を使ってるんだが、攻撃する隙が無さすぎてつらい……。。
バニッシュにこだわらないでチマチマ攻撃するべきかなぁ……」




「深遠戦は打撃武器の方が無難じゃありませんか?四季も射撃武器の辛さはメカさんで身に染みてます……。。。」




「そうなんだが、 刀はアストラだから防御力がなー。いつも焦れて刀に持ち替えて、深遠に轢かれてやられてるし……




「それは避けてください。。白四季も終始アストラカタナ一本であんまり負けませんから大丈夫です仮面でハーフドール使うけど
それに火力的な意味でも、非力系クラスで行くならアストラをおすすめしますよー。PP回収率が桁違いですからね!




そんなもんかー、と頭を悩ませるご主人様。お酒を片手におでんやら何やらをつまみながらこの話題。んー、平和。




「とにかくご主人様はソロ花クリアはよしてくださいお願いします、四季の方が先に進んでるみたいで嫌じゃないですか!」




「いやお前の方が基本上手くないか?正直PSO2では勝てないと思ってる」




「何を仰るうさぎさん!そんなのはこの四季が許しません、嫁的に!
上手でないなら上手になってください、思い出すのです!モンハン2Gでマガティガに笛ソロ挑んだ時の事を……!!」




「笛はティガとの相性は悪くなかったからなぁ。火力不足で時間はかかるが。
それよりはマガティガに回避距離も性能なしのヘビィでいく方が苦行だと思うぞ?」




「確かにヘビィはティガのサイズによってはマジで辛いですけどね……。
どんなに先回りしても、でんぐり返しだけでは突進を避けれないティガっているんですよね。
それくらいの大きさになると正直お手上げです。一応振り返りに必ず武器をしまうっていう対策は出来ますが、ヘビィでそれをすると攻撃するタイミングがほぼなくって……。
そういうティガよりはジャンプテオの方がまだマシですね。。。」




「ジャンプテオは笛ソロ出来なかったな……大剣と太刀ではやったけど、ていうかガンナーは一撃死だろ?よくやったな。。」




「突進は堪えますよ!基本大技以外で一撃死させてくるのはラージャンくらいです。
というかそうじゃないと負けます。。。」




「ラージャンと言えば双獅激天?だったか。
あれは結局閃光なしは無理だったな……お互いにぶつかりながら突進してくるからラグ酷すぎて回避どころじゃなくなったりな。。 」




「ラージャンはガンナー的にあんまり敵じゃないのですけど、あれはナルガ防具じゃないと無理ゲーでした。。。
ところで何でモンハンの話してるんです???しかも2G。




「ジョジョブラキの話にするか?」




「通常弾を顔に撃つべし。完!」




4とかクロスは……PSO2始めて以来あんまりやってないな。。。」
 



「PSO2の話題に戻りませんか!?」




そうだな、と笑ってまたお酒を一口。




四季も一緒に、ぐいっとそれを飲み下す。




甘くて、ほんのすこし酸っぱい。うんでも甘い。。




やっぱり、ジュースみたいで美味しい、というのが適当な感想だと思う。
どうにもこういうのは、お酒の雰囲気がしないのだ。




と、ご主人様が四季の升が空になったのを見て注ぎ足してくれようと瓶を取る。




つい止めようと手を上げかけたけど、今は良いだろうかと思い直した。




「どうぞ。」




とくとくとく、と結構勢いよく注がれていく。。




「……頂戴いたします。」




言葉ばかり畏まってみるものの、何となく雰囲気は伝わってるのだと思う。そうでなければわざわざ四季の方に注いだりしないだろうし。




……締まらない、と言えば聞こえが悪いけど。




うん。こういうのも嫌いではない。




「おつまみ。足りますか?」




「ああ、ちょうど良いだろ。何ならこないだみたいに、 良い感じに酔っぱらっても良いんだぞ。明日は俺も休みだしな。」




「そ、それは忘れてくださいっていうか、お恥ずかしいところをって申しますか……。。。
こほん。ですが、今日ばかりはそうとも参りません。お休みだからこそ、したいこといっぱいしなくちゃいけませんからね!
クロトとかクロトとかクロトとか!」




「デスヨネー。んじゃあまぁ、さくっと飲んでさっさと寝て、明日はゲーム三昧するか。」




「あは。ちょっとだけ、良い身分過ぎる気もしますが。。」




ふわふわしてきた頭に、火照ってきた身体。酔いは浅く、でも染み渡っている。
こんな風に自分で遊べることを、いったいどうして良い言葉で締め括れるだろう。




……でも、たまにはこういうお酒も良い。




「ご主人様。」




返ってきた視線に、出来るだけ明るい顔で笑って見せた。




明日。ちょっとだけはしゃいじゃったらごめんなさい」
















外は雨に濡れている。




今夜は冷えるのかな、なんて思っていたけど。どうやら、あんまりそういうこともないらしい。