空を見れば、月がすごく綺麗に輝いていた。
……雲もあまりない、暗い夜空を照らす金色の半月。
いや、半月、よりはやや膨らんでいるのだろうか。弓引きという程ではないけど。
……きれいだな。
「どうかしたか?」
階段から降りてきた彼の声に振り返る。
「………いいえ、なんでも。ただ……」
月が綺麗で、なんて言いそうになって口ごもる。
そういえば、それは随分前に彼が私に使った言葉だった。
私の場合は本当に月が綺麗だったからそう言葉にしそうになっただけだけど。。
誤解されるのもなんだし、そもそもそういうキザったらしいのはご主人様の専売特許だし。
……そう思い返していると、昔の彼は今より大分気取っていたな、なんて思い出してちょっと笑えてしまった。
「寒いですね。」
それが嬉しかったので、出来るだけその笑顔のままで誤魔化した。
この季節、街にはイルミネーションとかいうらしい電気の飾りがそこかしこに巻き付いて、深夜の暗闇を許さない。
そんなことに気がついたのも、実際のところここ数年。
子供の頃の私にそんな感慨はなかったし。
いろんなことに興味が無さすぎたと、我ながら惜しくも感じる。
「もうクリスマスってかんじですね。町中がこう、夜だというのに人の気配?で溢れてて」
半分は皮肉で言ったのだけど、隣を歩く彼はそれに笑って同意した。
「クリスマスなんて、お前は興味ないと思ってたけどな。宗旨替えしたか?」
「確かに四季は宗教には習いませんけどね。なんたってこの四季、いついかなるときもご主人様のものですから!」
そう言うと、彼はふいっとそっぽを向いてしまった。
「あは、未だにこんな言葉で照れちゃうなんて、ご主人様もまだまだですね!」
「お、お前は………。。外ではほら、知ってる奴に聞かれたら死ねるというか……」
そこは同意だけど、今は人気の少ない深夜だし。だからこうして、デートっぽく隣を歩いているわけだし。
「とはいえ確かに、クリスマスに関心はありませんね。。。ご主人様とミニパーティをする時間もありませんし、そもそも行事の意味を知りませんから。
どなた様かの生誕祭なんですよね?それをお祝いする行事なんですか?
というか前から疑問だったんですが、そもそもそれって10月とかだとか聞いたような?」
「結局関心はないんだな……」
「え。ご主人様、興味がおありでした?
そうなのでしたら、何かしらイベントっぽく準備とか致しますが……」
「いやない。というか時間がないから無理だ。ゆっくり時間が取れるのも、せいぜい来週までだろうな」
何の感慨も抱かせない声で彼は言う。
彼がどういう意図でそうしたのかは解らないけど。それで何故か、あぁ、今年ももう終わるのか、なんて思いを馳せた。
……そういえば。こんな四季だから、クリスマスなんて行事には乗っかったことが無かったように思う。
子供の頃に何故か毎年外国のファンタジー小説を用意されたのは覚えているが、家に買って来られたもので自分用に貰ったわけでは無かったし。
あと四季的にはそういうのより京極堂シリーズとかの方が(ry
今年も時間は取れないのだろうけど。
それでも、何かの思い出作りには悪くないタイミングなんだろうな、なんて叶わぬ夢を夢想する。
「……時間が経つのは早いな。もうこんな季節なのか。」
その声にもやっぱり何の躍動もなくって、ちょっと訊ねてみる。
「それは、どういう気持ちでそう仰ってるんですか?
時間が惜しいなぁ、ってことですか?
それとも、季節の巡りisいとをかし、的なプラス思考?」
「んー……どうだろうなぁ。惜しいのも確かだけど、それを悔やんじゃいないしなぁ。」
「でしたらいとをかし、でよろしいかと。
風情というのはそういうものでしょう。
たとえばこんな夜なのに街が明るいのもそうです。 暗くてもいいのに。
物の良し悪しとか全部ひっくるめて愛でてしまえば、それで大抵のものは許せちゃいます」
「……知ってはいたけど、お前割と悪人の素養があるよな。」
「い、今のでそこまで発展しないでくださいそれ自体は事実ですが!」
悪い悪い、とからかうようにころころ笑う。
………まったく。本心のくせに、そういうのがずるいと思うのだ。
そこまで文句が出かかっているのに、許せてしまうから何も言えなくなる。
一応の形として怒った顔くらいしなくちゃと思っても出来なくなる。
好きになるというのはそういうこと。
その良しも悪しも初めから許しているし、見届けたいと思うし、手助けしたいと思う。人であれ物であれそこは変わらない。
そして何より、邪魔をしたくないと思ってしまう。
……最後の結論は人によっては違うかもしれないけど。
有り体に言うならこの場に限っては惚れた弱味というものかもしれない。
だから、そういうのを使ってくるのは、卑怯だ。
「というか、今更何を仰るんですか?四季が悪女じゃなければ何だと仰るのか。」
「今お前悪人って言われて怒ってなかったか?」
「ほんとにご主人様は変なところで鋭いんですからっ!!
あれです!自分で言うのと他人に言われるのは別とか、そういうあれです!!」
「え、え??あぁうん、悪女悪女」
「よっし喧嘩上等デッパツダー!!」
「でっぱつ???な、なんだそれ」
「アムチのあのボクスなんたらさんの稀少種の真似です。でっぱつって言ってません?」
「へ、へぇ。そうなのか。」
………い、言ってますよね???←
……雲もあまりない、暗い夜空を照らす金色の半月。
いや、半月、よりはやや膨らんでいるのだろうか。弓引きという程ではないけど。
……きれいだな。
「どうかしたか?」
階段から降りてきた彼の声に振り返る。
「………いいえ、なんでも。ただ……」
月が綺麗で、なんて言いそうになって口ごもる。
そういえば、それは随分前に彼が私に使った言葉だった。
私の場合は本当に月が綺麗だったからそう言葉にしそうになっただけだけど。。
誤解されるのもなんだし、そもそもそういうキザったらしいのはご主人様の専売特許だし。
……そう思い返していると、昔の彼は今より大分気取っていたな、なんて思い出してちょっと笑えてしまった。
「寒いですね。」
それが嬉しかったので、出来るだけその笑顔のままで誤魔化した。
この季節、街にはイルミネーションとかいうらしい電気の飾りがそこかしこに巻き付いて、深夜の暗闇を許さない。
そんなことに気がついたのも、実際のところここ数年。
子供の頃の私にそんな感慨はなかったし。
いろんなことに興味が無さすぎたと、我ながら惜しくも感じる。
「もうクリスマスってかんじですね。町中がこう、夜だというのに人の気配?で溢れてて」
半分は皮肉で言ったのだけど、隣を歩く彼はそれに笑って同意した。
「クリスマスなんて、お前は興味ないと思ってたけどな。宗旨替えしたか?」
「確かに四季は宗教には習いませんけどね。なんたってこの四季、いついかなるときもご主人様のものですから!」
そう言うと、彼はふいっとそっぽを向いてしまった。
「あは、未だにこんな言葉で照れちゃうなんて、ご主人様もまだまだですね!」
「お、お前は………。。外ではほら、知ってる奴に聞かれたら死ねるというか……」
そこは同意だけど、今は人気の少ない深夜だし。だからこうして、デートっぽく隣を歩いているわけだし。
「とはいえ確かに、クリスマスに関心はありませんね。。。ご主人様とミニパーティをする時間もありませんし、そもそも行事の意味を知りませんから。
どなた様かの生誕祭なんですよね?それをお祝いする行事なんですか?
というか前から疑問だったんですが、そもそもそれって10月とかだとか聞いたような?」
「結局関心はないんだな……」
「え。ご主人様、興味がおありでした?
そうなのでしたら、何かしらイベントっぽく準備とか致しますが……」
「いやない。というか時間がないから無理だ。ゆっくり時間が取れるのも、せいぜい来週までだろうな」
何の感慨も抱かせない声で彼は言う。
彼がどういう意図でそうしたのかは解らないけど。それで何故か、あぁ、今年ももう終わるのか、なんて思いを馳せた。
……そういえば。こんな四季だから、クリスマスなんて行事には乗っかったことが無かったように思う。
子供の頃に何故か毎年外国のファンタジー小説を用意されたのは覚えているが、家に買って来られたもので自分用に貰ったわけでは無かったし。
今年も時間は取れないのだろうけど。
それでも、何かの思い出作りには悪くないタイミングなんだろうな、なんて叶わぬ夢を夢想する。
「……時間が経つのは早いな。もうこんな季節なのか。」
その声にもやっぱり何の躍動もなくって、ちょっと訊ねてみる。
「それは、どういう気持ちでそう仰ってるんですか?
時間が惜しいなぁ、ってことですか?
それとも、季節の巡りisいとをかし、的なプラス思考?」
「んー……どうだろうなぁ。惜しいのも確かだけど、それを悔やんじゃいないしなぁ。」
「でしたらいとをかし、でよろしいかと。
風情というのはそういうものでしょう。
たとえばこんな夜なのに街が明るいのもそうです。 暗くてもいいのに。
物の良し悪しとか全部ひっくるめて愛でてしまえば、それで大抵のものは許せちゃいます」
「……知ってはいたけど、お前割と悪人の素養があるよな。」
「い、今のでそこまで発展しないでください
悪い悪い、とからかうようにころころ笑う。
………まったく。本心のくせに、そういうのがずるいと思うのだ。
そこまで文句が出かかっているのに、許せてしまうから何も言えなくなる。
一応の形として怒った顔くらいしなくちゃと思っても出来なくなる。
好きになるというのはそういうこと。
その良しも悪しも初めから許しているし、見届けたいと思うし、手助けしたいと思う。人であれ物であれそこは変わらない。
そして何より、邪魔をしたくないと思ってしまう。
……最後の結論は人によっては違うかもしれないけど。
有り体に言うならこの場に限っては惚れた弱味というものかもしれない。
だから、そういうのを使ってくるのは、卑怯だ。
「というか、今更何を仰るんですか?四季が悪女じゃなければ何だと仰るのか。」
「今お前悪人って言われて怒ってなかったか?」
「ほんとにご主人様は変なところで鋭いんですからっ!!
あれです!自分で言うのと他人に言われるのは別とか、そういうあれです!!」
「え、え??あぁうん、悪女悪女」
「よっし喧嘩上等デッパツダー!!」
「でっぱつ???な、なんだそれ」
「アムチのあのボクスなんたらさんの稀少種の真似です。でっぱつって言ってません?」
「へ、へぇ。そうなのか。」
………い、言ってますよね???←