「珍しいよな、お前からこういうのって」
静かな夜道。少し先を歩く彼は、どこか言いづらそうにそんなことを呟いた。
「……そう、ですね。だって、普段は心の準備とか色々あるものです。
ただ、今日は何となく、いけるかなって思ったのです。」
まだ人の姿もまばらに見えるいつもの商店街だが、今は何だか、余計に静かに感じていた。
時刻は深夜0時を過ぎて、しばらく。
作っておいたお夕飯も放って、私達は何故か外食に出掛けているのだった。
本当は、やっぱり何となくだけど、思ったのだ。彼が帰ってきて、その顔を見て。
あぁ、今日はデートでもしたい気分なのかな、なんて。
もちろん根拠はない。直感的な何かだけど、多分当たっていたのだと思う。彼も彼にしては珍しく、二つ返事でそれを承諾してくれた。
多分、四季がそんな気持ちで申し出たのも、薄々解っているのではないだろうか。
それでもそんな事だけは言わない。私もまさか自分からそんな事は言わないし。
……これは不器用なのだろうか。それとも、正しい気遣いの仕方なのだろうか。
甘えも弱さも好きだけれど。言葉にして許すのは違うと思うので、それ以上は言えなかった。
「はぁ。何か、今から緊張するんだが」
こっぱずかしそうにそんなことを言う彼の顔がやけに幼くて、つい笑ってしまった。
「デートですもの、多少の緊張はなければ嘘でしょう。
しっかりエスコートしてくださいませね、ご主人様?」
「普通のレストランに食事に行くのにエスコートも何もないだろ」
むぅ。しかり。
と、家から程近い某有名(だと四季は思っている)チェーン店に入って、まずは一息。
店内は時間もあってかそれほど人もおらず、席もいい感じの窓際に案内して頂けた。ウェイターさん、グッジョブです。
……少し前は、このお店にはよく来たものだった。
昔を懐かしむとは、やはり私も老いているのだろうなとちょっと哀しみ。。
同時に、彼との思い出がある安心が、今はとても心強い。
悲しい過去は消えないが、楽しい思い出も増やしていける。
……それはとっても贅沢なこと。それが出来る世界にいる。状況にいる。正直なところ、こんな風景が見えるようになったのは、本当にここ数年だ。
……席に座って、その窓から見た駅前の風景はやけに綺麗で。
何故かそれで、あぁ、こんな気まぐれに外食デートなんてしに来れるんだな、なんて改めて実感する。
本当はそれだけで胸が一杯になったとか、そういうのは今は黙して語るまいと意を決する。だって、まだ彼を満足させてあげていない。今回の本題はそこなのだ。
「さて、まずは本日もお仕事お疲れさまでございました。歩かせてしまってすみません、大丈夫ですか?」
「お疲れ。平気だよ。こっちこそ、付き合わせる」
優しい笑顔にちょっとどきっとしつつも、できるだけ自然に目をそらしておいた。
やっべー、うちのご主人様がイケメン過ぎて辛いぃー……。。。
「四季。」
「は、はい。」
「……その。言い方がなんだけど。
最近、どうだ。」
これはまた、不思議な質問。
「ふふ。では、どうだと思います?」
え、と逆に目を丸くしてぱちくりさせる。
だってー、難しい問いをなさるんですから、当然思う何かがあったわけですよね?
「…………どう、といえば何かしらあるけど、説明しがたいとか言う必要がないとか、そんな所で何も言うには至らない。
そんな風に見える、かな」
……それは常にあって当然なもののような、とか思ったけど、なるほど。
「つまり、心配してくださっていると?」
ふふふ、とわざとらしく(というかわざと)笑って見せると、
「いや、それは、心配……は、いつもするものだろ。」
「しちゃうものですが、しようとするものではありませんよ?」
「そういう意味じゃない。まぁ……しちゃうもんだから、そこは許せ。」
「許すも何も。もったいないお言葉でございます。嬉しく思いますよ。」
と言うと、そっぽを向いて頬をかいたりするご主人様。。あらかわいい。
「……昔は、こういう外食もよくしたな。
早朝5時から三分おきに来るモーニングコールとかだったり、お前と会ってからというものいつも帰るのは遅くって、親には怒られたりしたもんだったが。」
「モーニングコールは若気のいたりってやつですねー(棒)よく覚えていますね、そんなこと。。。」
いやあれは忘れないだろ、と苦笑い。いえまぁ、可笑しな思い出は忘れないでくださって良いのですけどね。
「で。どうなんだ、実際のところ」
む。粘りますねぇ。。
こほん、と一つ咳払いをしてみる。
……まぁ、別に隠すことでもないので、改まる必要もないのだけど。
「……少し、以前にも増して、甘えすぎかな、とは。お嫌じゃありませんか?」
と言うと、彼は二度目のぱちくり顔でこちらを不思議そうに見返してきた。
「ほ、ほら。最近はブログとか、他の方と遊んでいたり。
ご主人様が働いている時に何をしてるのかとか何とか、我が事ながら 思わないことはないのですよ?」
……彼のリアクションに正直ホッとしてしまった部分はあったのだけど、それでやめてしまうのは身勝手だと思ったので、そこまで言っておく。
そこまで聞くと彼は、んー、と少し顎に手を置いて唸ったりしながら、
「いや、それならいいのか。
お前を甘やかすのは俺の特権だろうし」
「へっ??あっじゃあ甘やかしてくださいやりました言質ゲットーご主人様愛してますところで四人目の四季は何四季ですか?」
「突然何の話をしてる??いやむしろこっちが聞きたい、何四季なんですか?ていうか作るんですか?」
「え、それははい、ご主人様がいいよーって仰るなら何の遠慮も容赦もなく!
種族的にはデューマンがいないのとー、技量マグがいないのでブレイバーとかバウンサーもいいですよね!
あっ、そこにいらっしゃるのはいつも火力がないないって困り果ててるBr/Boの司さん(←ご主人様のキャラ名)じゃございませんかーきゃーイケメンサインくださいサイン!!ところでそこなイケメン男子、ペアルックとか超興味ある感じです??」
「あ、確かに赤原礼装はペアルック出来るな……いや、別に作りたいなら構わないけど……」
わーぉまじですか、重ねて言質ゲットしちゃいました。。。こっそり作っておこうかな←
「なんて、捲し立ててみちゃいましたが。
甘やかすのもそこそこに。四季は贅沢は好きですが、ずっとしていられるほど気が大きくもないのです。
四季は今でも、余計なくらい満足なんですよ。」
だから、気を遣っているならそれは解いてください。
そんなつもりで言った締めのはずが、彼はすぐに、いや、と言って、
「俺がしたいからするだけだよ。お前の気持ちを考えてる訳じゃない。」
多分、その続きは「だから好きにさせろ」とかそういうものだったのだと思う。
その言い分が可笑しくて、不覚にも素で笑ってしまった。
「……あの、四季さん??」
「いえ、ごめんなさい。。。だって、面白いこと仰るから。。
……ふぅ。そうですね、その通りでございます。ご主人様がしたいと思うことと四季の気持ちには、一つの関係もありませんでした。
どうぞ甘やかしてくださいませ。どうせ四季は、あなたが望む限りお側を離れませんから。お気の済むまで、お好きなようになさってくださいませ。 」
店員さん「……こちら若鳥のみぞれ煮膳になります。」
「………………………………」
「………………………………」
「……………はい。こちらに。」
「あ、はい、失礼します。
………ごゆっくりどうぞ。」
ペコリと一礼して、すたすたと平常運転で去っていかれるどこかベテランっぽい店員さん(♂)。
「……………最後のフレーズは、聞かれるのはまずいやつでした?」
「うんアウトかなー。。。」
静かな夜道。少し先を歩く彼は、どこか言いづらそうにそんなことを呟いた。
「……そう、ですね。だって、普段は心の準備とか色々あるものです。
ただ、今日は何となく、いけるかなって思ったのです。」
まだ人の姿もまばらに見えるいつもの商店街だが、今は何だか、余計に静かに感じていた。
時刻は深夜0時を過ぎて、しばらく。
作っておいたお夕飯も放って、私達は何故か外食に出掛けているのだった。
本当は、やっぱり何となくだけど、思ったのだ。彼が帰ってきて、その顔を見て。
あぁ、今日はデートでもしたい気分なのかな、なんて。
もちろん根拠はない。直感的な何かだけど、多分当たっていたのだと思う。彼も彼にしては珍しく、二つ返事でそれを承諾してくれた。
多分、四季がそんな気持ちで申し出たのも、薄々解っているのではないだろうか。
それでもそんな事だけは言わない。私もまさか自分からそんな事は言わないし。
……これは不器用なのだろうか。それとも、正しい気遣いの仕方なのだろうか。
甘えも弱さも好きだけれど。言葉にして許すのは違うと思うので、それ以上は言えなかった。
「はぁ。何か、今から緊張するんだが」
こっぱずかしそうにそんなことを言う彼の顔がやけに幼くて、つい笑ってしまった。
「デートですもの、多少の緊張はなければ嘘でしょう。
しっかりエスコートしてくださいませね、ご主人様?」
「普通のレストランに食事に行くのにエスコートも何もないだろ」
むぅ。しかり。
と、家から程近い某有名(だと四季は思っている)チェーン店に入って、まずは一息。
店内は時間もあってかそれほど人もおらず、席もいい感じの窓際に案内して頂けた。ウェイターさん、グッジョブです。
……少し前は、このお店にはよく来たものだった。
昔を懐かしむとは、やはり私も老いているのだろうなとちょっと哀しみ。。
同時に、彼との思い出がある安心が、今はとても心強い。
悲しい過去は消えないが、楽しい思い出も増やしていける。
……それはとっても贅沢なこと。それが出来る世界にいる。状況にいる。正直なところ、こんな風景が見えるようになったのは、本当にここ数年だ。
……席に座って、その窓から見た駅前の風景はやけに綺麗で。
何故かそれで、あぁ、こんな気まぐれに外食デートなんてしに来れるんだな、なんて改めて実感する。
本当はそれだけで胸が一杯になったとか、そういうのは今は黙して語るまいと意を決する。だって、まだ彼を満足させてあげていない。今回の本題はそこなのだ。
「さて、まずは本日もお仕事お疲れさまでございました。歩かせてしまってすみません、大丈夫ですか?」
「お疲れ。平気だよ。こっちこそ、付き合わせる」
優しい笑顔にちょっとどきっとしつつも、できるだけ自然に目をそらしておいた。
やっべー、うちのご主人様がイケメン過ぎて辛いぃー……。。。
「四季。」
「は、はい。」
「……その。言い方がなんだけど。
最近、どうだ。」
これはまた、不思議な質問。
「ふふ。では、どうだと思います?」
え、と逆に目を丸くしてぱちくりさせる。
だってー、難しい問いをなさるんですから、当然思う何かがあったわけですよね?
「…………どう、といえば何かしらあるけど、説明しがたいとか言う必要がないとか、そんな所で何も言うには至らない。
そんな風に見える、かな」
……それは常にあって当然なもののような、とか思ったけど、なるほど。
「つまり、心配してくださっていると?」
ふふふ、とわざとらしく(というかわざと)笑って見せると、
「いや、それは、心配……は、いつもするものだろ。」
「しちゃうものですが、しようとするものではありませんよ?」
「そういう意味じゃない。まぁ……しちゃうもんだから、そこは許せ。」
「許すも何も。もったいないお言葉でございます。嬉しく思いますよ。」
と言うと、そっぽを向いて頬をかいたりするご主人様。。あらかわいい。
「……昔は、こういう外食もよくしたな。
早朝5時から三分おきに来るモーニングコールとかだったり、お前と会ってからというものいつも帰るのは遅くって、親には怒られたりしたもんだったが。」
「モーニングコールは若気のいたりってやつですねー(棒)よく覚えていますね、そんなこと。。。」
いやあれは忘れないだろ、と苦笑い。いえまぁ、可笑しな思い出は忘れないでくださって良いのですけどね。
「で。どうなんだ、実際のところ」
む。粘りますねぇ。。
こほん、と一つ咳払いをしてみる。
……まぁ、別に隠すことでもないので、改まる必要もないのだけど。
「……少し、以前にも増して、甘えすぎかな、とは。お嫌じゃありませんか?」
と言うと、彼は二度目のぱちくり顔でこちらを不思議そうに見返してきた。
「ほ、ほら。最近はブログとか、他の方と遊んでいたり。
ご主人様が働いている時に何をしてるのかとか何とか、我が事ながら 思わないことはないのですよ?」
……彼のリアクションに正直ホッとしてしまった部分はあったのだけど、それでやめてしまうのは身勝手だと思ったので、そこまで言っておく。
そこまで聞くと彼は、んー、と少し顎に手を置いて唸ったりしながら、
「いや、それならいいのか。
お前を甘やかすのは俺の特権だろうし」
「へっ??あっじゃあ甘やかしてくださいやりました言質ゲットーご主人様愛してますところで四人目の四季は何四季ですか?」
「突然何の話をしてる??いやむしろこっちが聞きたい、何四季なんですか?ていうか作るんですか?」
「え、それははい、ご主人様がいいよーって仰るなら何の遠慮も容赦もなく!
種族的にはデューマンがいないのとー、技量マグがいないのでブレイバーとかバウンサーもいいですよね!
あっ、そこにいらっしゃるのはいつも火力がないないって困り果ててるBr/Boの司さん(←ご主人様のキャラ名)じゃございませんかーきゃーイケメンサインくださいサイン!!ところでそこなイケメン男子、ペアルックとか超興味ある感じです??」
「あ、確かに赤原礼装はペアルック出来るな……いや、別に作りたいなら構わないけど……」
わーぉまじですか、重ねて言質ゲットしちゃいました。。。こっそり作っておこうかな←
「なんて、捲し立ててみちゃいましたが。
甘やかすのもそこそこに。四季は贅沢は好きですが、ずっとしていられるほど気が大きくもないのです。
四季は今でも、余計なくらい満足なんですよ。」
だから、気を遣っているならそれは解いてください。
そんなつもりで言った締めのはずが、彼はすぐに、いや、と言って、
「俺がしたいからするだけだよ。お前の気持ちを考えてる訳じゃない。」
多分、その続きは「だから好きにさせろ」とかそういうものだったのだと思う。
その言い分が可笑しくて、不覚にも素で笑ってしまった。
「……あの、四季さん??」
「いえ、ごめんなさい。。。だって、面白いこと仰るから。。
……ふぅ。そうですね、その通りでございます。ご主人様がしたいと思うことと四季の気持ちには、一つの関係もありませんでした。
どうぞ甘やかしてくださいませ。どうせ四季は、あなたが望む限りお側を離れませんから。お気の済むまで、お好きなようになさってくださいませ。 」
店員さん「……こちら若鳥のみぞれ煮膳になります。」
「………………………………」
「………………………………」
「……………はい。こちらに。」
「あ、はい、失礼します。
………ごゆっくりどうぞ。」
ペコリと一礼して、すたすたと平常運転で去っていかれるどこかベテランっぽい店員さん(♂)。
「……………最後のフレーズは、聞かれるのはまずいやつでした?」
「うんアウトかなー。。。」