「………ただいま」




そう玄関から入ってきたのは、夜の街はよくいそうなただの酔っ払いさんだった。。。




「お、おかえりなさいませ……大丈夫ですか?えっと、お水とかいります?」




「……貰えるかな。ちょっと、着替えてくるから」




かしこまりました、と言いつつ、手を差し出すと、それはさらに手で制された。




そのまま着替えに玄関を抜けお部屋へと向かわれるその背中に、それでも一応ついていく。




そんな背後の私を見た彼の目が、何となく『大丈夫だから、ついてこないで平気だって』とか訴えていた気がするが、そんな言葉を発する余裕もないのならなおさらだ。黙って後ろをついていく。


とりあえずお部屋の前までついていって、彼が中に入ってからお水の用意に戻った。




………嫌な酒の臭いがしたな、というのが素直な感想だった。




『職場の酒の付き合い』の臭いは独特で、近くに寄るだけで解るものだ。そしてその臭いというのが、四季にしては珍しく、はっきりと嫌いであったりする。




別に、だからどうということはないのだけど。酒を呑むのもそういう場にいくのもあの方の自由だし、逆に言うなら嫌だから止めるのも自由だろうけど、ならその二つを天秤にかけてみれば一目瞭然。


なので、四季から言うことは何もないし、了承している以上嫌な顔はしない。
そもそも誘われても出来るだけ断っているらしいあの方にこれ以上身勝手を言うのは、いじめか追い討ちみたいで悪い気しかしないし。






「お水、お持ちしましたよ。入りましょうか?」




返事はない。




んーこれは寝たかなー、とこっそり戸を引いて見ると、案の定、彼はベッドに横から頭を乗っけて、床に座り込んでいた。


あとなにげに腕が万歳するみたいにベッドに伸びていて面白いんですけどそれはあれですか、茹で上がった頭で必死に考えた渾身のボケでした???




「もー。。ご主人様ー、ベッドに横になってくださいー。」




肩をポンポン、では反応しないので、
タンタン、でも反応しないので、
頬をペシペシ「んー……」、つねつね「ちょ…まった…」、終いには竹刀を持ち出してきて頭をペシペシ「待って落ち着こう、話し合おう」





「待ってくれ、悪かったから竹刀はやめよう」




「あ、やーっと起きましたね?ダメですよ、ベッドに横になって寝ませんと。明日も朝からなのでしょう?あ、はい、お水はこちらに」




「え、あ、どうも……おかしいな聞こえてないのかな……




お水を一気に飲み下すと、ふぅ、と声に出してからさっきよりはっきりした目でこちらを見て、




「ありがとう。悪いな、今日は遅くなった」




「いいえ、お疲れ様でした。ちゃんと食事は取られました?」




「ああ、かなり。。」




と、ふと何やら思案顔で目を背けるご主人様。




なんですかー、と無言の目線で問い詰めると、四季の反対まで顔を背けてしまった。むぅ、何だというのか。




「今なら許して差し上げます。どこの女ですか、ちょっとその首獲りにいくので特徴を教えてk「違う違う違う。来週、休みを貰えるらしいんだ」




はて?と首をかしげてみる。休み、とは、どういう意味だろう。普段の週1~2のお休みではなく、余計にもらえたということか。




「四連休なんだが。どこか行きたいところとかあるか?」




……どこまでも唐突である。




四連休?それはいわゆる、お盆休みということか。来週では若干遅いですが。。




そして、どこにいきたいかとは、これまた急なお話である。
四連休。四連休。。四日もあれば、軽い旅行だってできてしまう。


どこにいきたいか?真っ先に温泉旅行!とか思ったけど、そんな夢のあるお話はとりあえず候補にいれつつ隅に置いておきまして。えー、えーと、ど、ど、どうしましょう。。。




「……いえ、特に四季からの希望はございません。むしろ、四季の望みはご主人様のお望みに沿うものです。」




と言うと、意外とあっさりそれを受け止めて、そうか、とつまらなさそうにただ一言。




それでその会話は閉じてしまった。

























何て返せばよかったんでしょううわぁぁぁあ!!!!←現在