トントントン、という、リズムのいい音に疑問を感じた。
何の音だろう。そんな疑問が、何故か唐突に焦りを生む。
何かおかしい、これは良くない、このままではいけない……でも、それの正体が解らないから、どうするべきか解らない。
漠然とした焦燥感に駆られつつ、動こうとしない頭を蹴り起こす気持ちで巡らせる。
うごけー、私のあたまー。。
えーっと、まず、この音は何なのか。
包丁、というかまな板の音かな?多分、リズム的にきゅうりとかその辺を切ってる音。
で、何でそんな音が?それは料理してるからでしょう。
じゃ誰が?えー、あれ、私じゃないんです?ってか私今何して……、
「ご主人様っ!?」
↑こんな流れで目を覚ました昨日の朝。。。
急いで台所に向かうと、そこには見慣れた背中があった。
「あっ、ああああの!ごめんなさい私、寝過ごしてしまってたみたいで……!!」
彼は半分だけ振り返って、
「いや、今日は俺が早く起きただけだよ。
むしろ起こして悪かったな、静かにしようと思ってたんだが……。
あぁ、座っていいぞ。目眩とかするんじゃないのか?」
……四季は割と血の足りない方なのか、朝目が覚めたばかりとか、お風呂上がりだとかにはほとんどいつも立ち眩みを起こす。
ていうかいつの間に気付いたしご主人様。。いえ、隠していた訳でもなかったですけど、わざわざ言って伝えた記憶はないのですが。
そして案の定、今も結構目の前が真っ暗だったので、一先ずお言葉に甘えていいですか←
「……すみません。失礼します。」
半分手探りで居間の方へ向かい、椅子に腰を掛ける。
そして目眩が落ち着いてから台所にもう一度目をやると、同時に彼が私の名を読んだ。
「四季」
「はい。」
「おはよう。」
「おはようございます。」
できるだけ優しい声で、そう返した。
よいしょっと、と声を上げて、立ち眩みがないことを確認してから台所へ再侵入してみる。
「平気か?無理するなよ」
「そんな重病じゃありませんっ。目眩くらい、誰だってあると思います」
私がやります、とは言わないでおいた。
せっかくの好意を無駄にしてしまうのは良くないだろうし。……本当はやっぱり、悪い気がしてしまって、ちょっとだけ居心地が悪いのだけど。
でも、それと同じくらい、主人に手料理を振る舞われるというシチュエーションには特別なものがあったりするのだ。
背後から首を伸ばして手元を覗くと、包丁の作業はすでに終わっていて、まな板の隣のお皿にさっきの音源は盛られていた。
切っていたものはやはりきゅうりだった模様。先日何本かまとめて浸けておいたきゅうりを切ってくれたらしい。
今は味噌汁のお味噌をおたまの上で溶かしているようだった。見ればきゅうりの漬け物の他にも、先日四季が作ったのと同じような卵焼きがあった。
「わぉ、ご主人様焼きじゃないですか!」
「何だよそれ。ただのだし巻きだよ。いや、ちょっとミスったけど……」
……そして新事実発覚。それ、だし巻きと言うのですか。。。私ずっと卵焼きって呼んでたんですけど……もしかして違うものだったりします???ていうかまずい、こんなこと言ってたら今までひた隠しにしてきた四季の女子力の低さが露呈してしまう!←
そんなこんなで食卓に並ぶ、だし巻き、きゅうりの漬け物、お味噌汁、ご飯。
そしてすももの砂糖漬け。
すももを砂糖に浸けるなんてことをしたのはどこのどいつですか!はい私です!だって酸っぱかったんですもん!
「いや好きにして構わないけどさ……。
じゃあ、頂きます。」
「はい、頂きます。」
決め台詞も済んだところで、早速お味噌汁、だし巻きとお味を拝見。
「……ど、どうでしょうか。」
何故か改まるご主人様。。いえ、普通に美味しいので言葉もないのですけど……。。。
「それはもちろん、美味しゅうございます。
さすがと申し上げるべきでしょうか、他に気の利いた言葉の一つも浮かべば良いのですが………。
ですけど、味が違うものですね。」
それは、美味しい美味しくないとかのレベルや優劣の話ではなく。ジャンルというか、方向性のお話。
「お前が作るものって、なんていうか、しっかりしてるよなぁ……。考えて作ってるんだなーってのがひしひしと伝わってくる。。。」
「そ、そうなのですか??」
そこに「すごいと思う」とか「尊敬する」みたいな言葉が入ってこなかった辺り、やっぱりそれは純粋に良いという話でもないのか。
それとも彼にも自分なりに譲らない何かがあるのか。聞いてみたいけど、多分それは今の私には解らないことだろうし、やめておく。
「もう六時になったか。
たまの休日に、珍しく朝早くから起きてみるのも気分はいいな。」
「お身体に無理のないようにお願いしますね。昨日布団に入ってから5時間で朝食ですよ、ちょっと短いんじゃございませんか?」
「その時は早めに寝よう。そしてどうかそれまでに青のバレットボウを拾うのを手伝ってください。。。」
「もちろんですとも!いくらだってお供しますよ!」
何の音だろう。そんな疑問が、何故か唐突に焦りを生む。
何かおかしい、これは良くない、このままではいけない……でも、それの正体が解らないから、どうするべきか解らない。
漠然とした焦燥感に駆られつつ、動こうとしない頭を蹴り起こす気持ちで巡らせる。
うごけー、私のあたまー。。
えーっと、まず、この音は何なのか。
包丁、というかまな板の音かな?多分、リズム的にきゅうりとかその辺を切ってる音。
で、何でそんな音が?それは料理してるからでしょう。
じゃ誰が?えー、あれ、私じゃないんです?ってか私今何して……、
「ご主人様っ!?」
↑こんな流れで目を覚ました昨日の朝。。。
急いで台所に向かうと、そこには見慣れた背中があった。
「あっ、ああああの!ごめんなさい私、寝過ごしてしまってたみたいで……!!」
彼は半分だけ振り返って、
「いや、今日は俺が早く起きただけだよ。
むしろ起こして悪かったな、静かにしようと思ってたんだが……。
あぁ、座っていいぞ。目眩とかするんじゃないのか?」
……四季は割と血の足りない方なのか、朝目が覚めたばかりとか、お風呂上がりだとかにはほとんどいつも立ち眩みを起こす。
ていうかいつの間に気付いたしご主人様。。いえ、隠していた訳でもなかったですけど、わざわざ言って伝えた記憶はないのですが。
そして案の定、今も結構目の前が真っ暗だったので、一先ずお言葉に甘えていいですか←
「……すみません。失礼します。」
半分手探りで居間の方へ向かい、椅子に腰を掛ける。
そして目眩が落ち着いてから台所にもう一度目をやると、同時に彼が私の名を読んだ。
「四季」
「はい。」
「おはよう。」
「おはようございます。」
できるだけ優しい声で、そう返した。
よいしょっと、と声を上げて、立ち眩みがないことを確認してから台所へ再侵入してみる。
「平気か?無理するなよ」
「そんな重病じゃありませんっ。目眩くらい、誰だってあると思います」
私がやります、とは言わないでおいた。
せっかくの好意を無駄にしてしまうのは良くないだろうし。……本当はやっぱり、悪い気がしてしまって、ちょっとだけ居心地が悪いのだけど。
でも、それと同じくらい、主人に手料理を振る舞われるというシチュエーションには特別なものがあったりするのだ。
背後から首を伸ばして手元を覗くと、包丁の作業はすでに終わっていて、まな板の隣のお皿にさっきの音源は盛られていた。
切っていたものはやはりきゅうりだった模様。先日何本かまとめて浸けておいたきゅうりを切ってくれたらしい。
今は味噌汁のお味噌をおたまの上で溶かしているようだった。見ればきゅうりの漬け物の他にも、先日四季が作ったのと同じような卵焼きがあった。
「わぉ、ご主人様焼きじゃないですか!」
「何だよそれ。ただのだし巻きだよ。いや、ちょっとミスったけど……」
……そして新事実発覚。それ、だし巻きと言うのですか。。。私ずっと卵焼きって呼んでたんですけど……もしかして違うものだったりします???ていうかまずい、こんなこと言ってたら今までひた隠しにしてきた四季の女子力の低さが露呈してしまう!←
そんなこんなで食卓に並ぶ、だし巻き、きゅうりの漬け物、お味噌汁、ご飯。
そしてすももの砂糖漬け。
すももを砂糖に浸けるなんてことをしたのはどこのどいつですか!はい私です!だって酸っぱかったんですもん!
「いや好きにして構わないけどさ……。
じゃあ、頂きます。」
「はい、頂きます。」
決め台詞も済んだところで、早速お味噌汁、だし巻きとお味を拝見。
「……ど、どうでしょうか。」
何故か改まるご主人様。。いえ、普通に美味しいので言葉もないのですけど……。。。
「それはもちろん、美味しゅうございます。
さすがと申し上げるべきでしょうか、他に気の利いた言葉の一つも浮かべば良いのですが………。
ですけど、味が違うものですね。」
それは、美味しい美味しくないとかのレベルや優劣の話ではなく。ジャンルというか、方向性のお話。
「お前が作るものって、なんていうか、しっかりしてるよなぁ……。考えて作ってるんだなーってのがひしひしと伝わってくる。。。」
「そ、そうなのですか??」
そこに「すごいと思う」とか「尊敬する」みたいな言葉が入ってこなかった辺り、やっぱりそれは純粋に良いという話でもないのか。
それとも彼にも自分なりに譲らない何かがあるのか。聞いてみたいけど、多分それは今の私には解らないことだろうし、やめておく。
「もう六時になったか。
たまの休日に、珍しく朝早くから起きてみるのも気分はいいな。」
「お身体に無理のないようにお願いしますね。昨日布団に入ってから5時間で朝食ですよ、ちょっと短いんじゃございませんか?」
「その時は早めに寝よう。そしてどうかそれまでに青のバレットボウを拾うのを手伝ってください。。。」
「もちろんですとも!いくらだってお供しますよ!」