吐く息さえ白く輝く一面の銀世界。
人気のない雪原を可憐な少女がたったひとりで歩いている。
「ミコ、だいじょうぶだもん……」
少女はフードを深く被っていた。
かといって、少女の服装は雪の降り積もる中にいる格好にはほど遠く、
まるで東方に浮かぶ島国の暖かな季節に、一瞬だけ咲き乱れる桜のような、薄くひらひらしたものだった。
一陣の風が舞い、少女は左手でフードを、右手で二の腕辺りを押さえつけながら、なおも歩みを止めない。
右手の手のひらが触れている指の隙間からは、傷痕がハッキリと見てとれた。
“魔女狩り”
少女は忌まわしく哀しい過去を背負っていた。
絶滅したはずのニホンオオカミであり、ライカンスロープでもあったが故に、心無い人間から迫害を受けることとなったのである。
傷痕は大きく2つ。
鋭利な刃物で切り裂かれたらしい直線的な“M”のものと、弾丸で抉られたような曲線的な“S”のもの。
一瞥すると、“35”と刻印されているようにも見える。
少女はしきりにフードを気にしていた。
しかし、決して寒いからではない。
もともと狼である少女は寒さにめっぽう強く、衣類は人型になるためもあり、人間界の慣習に従っているだけ。
少女はなにより暗闇を怖れていた……。
闇の中にいると、狼へと勝手に形態を変化させてしまう、特異体質の持ち主となってしまった少女は、魔女狩りのトラウマから、狼化を避けるようになっていたのだった。
幸いにして、この地方はいま白夜の真っ最中であり、日の沈む危険性はまったくない。
ただ、少女はこれから向かう目的地のことが頭を掠めるたび、憂鬱のため息がふっと漏れてしまうのであった……。
人気のない雪原を可憐な少女がたったひとりで歩いている。
「ミコ、だいじょうぶだもん……」
少女はフードを深く被っていた。
かといって、少女の服装は雪の降り積もる中にいる格好にはほど遠く、
まるで東方に浮かぶ島国の暖かな季節に、一瞬だけ咲き乱れる桜のような、薄くひらひらしたものだった。
一陣の風が舞い、少女は左手でフードを、右手で二の腕辺りを押さえつけながら、なおも歩みを止めない。
右手の手のひらが触れている指の隙間からは、傷痕がハッキリと見てとれた。
“魔女狩り”
少女は忌まわしく哀しい過去を背負っていた。
絶滅したはずのニホンオオカミであり、ライカンスロープでもあったが故に、心無い人間から迫害を受けることとなったのである。
傷痕は大きく2つ。
鋭利な刃物で切り裂かれたらしい直線的な“M”のものと、弾丸で抉られたような曲線的な“S”のもの。
一瞥すると、“35”と刻印されているようにも見える。
少女はしきりにフードを気にしていた。
しかし、決して寒いからではない。
もともと狼である少女は寒さにめっぽう強く、衣類は人型になるためもあり、人間界の慣習に従っているだけ。
少女はなにより暗闇を怖れていた……。
闇の中にいると、狼へと勝手に形態を変化させてしまう、特異体質の持ち主となってしまった少女は、魔女狩りのトラウマから、狼化を避けるようになっていたのだった。
幸いにして、この地方はいま白夜の真っ最中であり、日の沈む危険性はまったくない。
ただ、少女はこれから向かう目的地のことが頭を掠めるたび、憂鬱のため息がふっと漏れてしまうのであった……。