ギタリストのためのレコーディング | スガ シカオという生き方 ~history of his way~

スガ シカオという生き方 ~history of his way~

1997年デビュー、2011年フリーランスとなった音楽侍スガシカオさんの記録。
本名:菅 止戈男。戈(ほこ)を止める=争いを止めることが「武」の本義であるという孔子の著から取られた名前に込められた思い、それに恥じない生き方の足跡。

ギタリストのためのレコーディングマガジンSOUND DESIGNER (2008年 10月)
“キング・オブ・ファンク”スガシカオが語り尽くした作曲術とレコーディングの手法
アルバム「FUNKAHOLiC」発売時記事
FUNKAHOLiC/スガシカオ

¥3,059
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新作「FUNKAHOLiC」のファンキーリズムパターンの作り方を徹底公開!
卓越した歌詞の世界と唯一無二のメロディ、類まれな歌声で、日本の音楽シーンに数々の名曲を残してきたスガシカオ。まさに、キング・オブ・ファンクの名に恥じない、ファンク色全開の傑作で、聞き返すたびクセになること必至だ!そこでスガシカオ本人にデモ作りの方法やレコーディングの様子など、他では絶対聞けない音楽制作テクニックについてじっくり迫った。


-ニューアルバムの「FUNKAHOLiC」は「ファンク中毒」という意味のごとく、ファンクナンバーで統一された作品に仕上がっていますが、当初からこういったコンセプトを持っていたんですか?

スガ「これまで色々なアルバムを作ってきましたが、僕の音楽的なルーツは、やはりファンクなので、「ファンクのカッコよさや面白さ、気持ちよさ、そして危うさとかが伝わる作品を作り上げたい」と考えたんです。」

-今回は楽曲によって、サウンドプロデューサーやミュージシャンを固定していませんが、その意図は何ですか?

スガ「最初に「プロデューサーを一人に統一して、1つのバンド形態でファンクをやるか?」それとも「僕を中心に、いろいろな人と組んでバリエーションのあるファンクをやるか?」で悩んだんです。で、結果ポップ色も強めるために様々な人と組んでカラフルなファンクをすることにしたんです。」

-それはミュージシャンだけでなく、ミックスやエンジニアも含めてですね。

スガ「はい。「バナナの国の黄色い戦争」みたいな生の躍動感が必要な曲は、やっぱり諸鍛冶 辰也さんのミックスしかないと思ったし、「13階のエレベーター」とか「潔癖」のように冷たいファンク系の曲には岡田勉さんが合うんですよね。他にも、プリンスっぽい曲の「Call My Name」は中村文俊さんにミックスしてもらいました。」

-それではスガさんのデモ作りの方法を教えてください。

スガ「前に使っていたローランドのHDレコーダーのVS-2480は、以前の仕事場と一緒に卒業して、去年の秋に新しいスタジオを開設したときにデジデザインPro ToolsHDに移行しました。外のスタジオで録ったものを同じ環境で再生できるシステムにしたので、MIDI関係もすべてPro Toolsで打ち込んでいます。」



ーリズムトラックはどうやって作っているのですか?

スガ「MIDIで打ち込むか、ドラムループ集からデータを持ってきますが、生ドラムをシュミレートする時は、今でもローランドU-220というリズムマシンを使って打ち込んでいます。
なぜかというと、これに内蔵された生ドラムの音は、本当に軽めの音なので、実際生ドラムになった時に、ガッカリしなくて済むんですよね。例えば、最近流行のBFDなどのハイスペックなドラムソフトで打ち込んでしまうと、実際に生ドラムに差し替えた時には揺れることもあるし、自分が求めていない太さが出てしまうことがあって、逆にガッカリすることがあるんですよ。だから最初から希望を高く持たないために、あえてものすごく軽めの音を使っておくと、生ドラムになった時に「お~やっぱり生はいいな!」って思えるんです(笑)」

-それではベースは?

スガ「カスタムメイドのTLベースと、あとはフェンダーの73年製のジャズベースの2本を使っています。これにヴィンテックのヘッドアンプだけ通して、直接Pro Toolsにライン録りをしています。ギターも同じシステムです。」

-ギターにアンプシュミレーターを使うことはありますか?

スガ「ライン6のAmpFarmは使いますが、一応ガイドとして「歪み系の音が欲しい」とかいう時だけです
ね。基本的には本チャンで録り直します。」

-シンセの音源は何を使っていますか?

スガ「シンセ系は全部ハードを使っていて、コルグのmicroKORGと、クラヴィアDMIのNordLead1です。」



-デモ作りの流れを教えてください。

スガ「曲によってデモの完成度はかなり差があるんです。「バナナの国の黄色い戦争」と「POP MUSIC」「Sofa」という3曲は完全にアレンジごとプロデューサーに丸投げするつもりだったので詰める必要がなくて、メロディとコード感がわかる程度に抑えてデモを作りました。「NOBODY KNOWS」や「フォノスコープ」「コノユビトマレ」や「潔癖」は、リフやタイミングまでキッチリと自分で作って、それを元にプロデューサーに整理をしてもらいました。」

-他の曲に関しては?

スガ「「プラネタリウム」は、僕の弾き語りのデモをギターの田中義人くんとデータ交換をしながら一緒に作りました。あと、「Call My Name」と「FUNKAHOLiC」と「13階のエレベーター」は、僕がサウンドプロデュースをしているので、録っていく段階から本チャン用の音決めをして録っていきました。シンセも自分で録って、後日スタジオでドラムやベース、ギターという生音を出さなければいけないものだけを録って、それを作業部屋にに持って帰って整理するという、典型的な宅録ですね。そして最後の「宇宙」はロンドンでセッション的に録りました。」

-本チャンでの使用ギターは?

スガ「エレキギターは、スパイラルのSTタイプとフェンダーのテレキャスター・シンラインがメインです。あとは「NOBODY KNOWS」のソロでギブソンのレスポールを飛び道具的に使いました。アンプは、ほとんどがトゥーロックのOpalを改造したものと、Reevesです。アコギは、デモでも使っているマーチンoooとギブソンB25の2本をマイク録りしました。」

-エレキを録る時のマイクは?

スガ「エレキのマイクは定番のシュアSM57かAM58です。「13階のエレベーター」のようなガッツのあるサウンドは、SM57とノイマンU87を立てて、男気あふれる感じで録りました。」

-歌録りのマイクは?

スガ「ソニーC12です。歌う前にマイクを色々試して曲との相性を見るんですけど、大体ノイマンU47とC12が並びますね。以前はU47がメインだったんですけど声質も変わってきますので、C12を使うことが多くなってきました。」

②に続く