コミュニケーションを描く | スガ シカオという生き方 ~history of his way~

スガ シカオという生き方 ~history of his way~

1997年デビュー、2011年フリーランスとなった音楽侍スガシカオさんの記録。
本名:菅 止戈男。戈(ほこ)を止める=争いを止めることが「武」の本義であるという孔子の著から取られた名前に込められた思い、それに恥じない生き方の足跡。

BREaTH Vol.10 1999年秋
LIFEーsuga shikao
$スガ シカオという生き方 ~history of his way~


スガシカオのアルバム「Sweet」の世界は深い。ここには安易な救済は一切ない。でも救いのない世界をリアルに描く事で、逆に彼はかすかな救いの可能性を示しているようにも見える。深い闇の奥底で目を凝らすような感覚を、この新作の中から感じ取ってっしまったような気がする。非凡な才能。強靭な意志。ねじれたセンス。そしてクールで冷徹な視線。「Sweet」完成後ツアーに入ったばかりの彼はどこを見つめているのだろうか?(長谷川誠)

- アルバムに対する反応で、嬉しかったり、腹がたったりってありましたか?

スガ「それはまぁ、たまにありますけど、。新しいリスナーが増えたのは確かなんですよね。そういう入門編、枠を広げるにはいいアルバムだと思うんですよ。ただ、「FAMILY」ぐらいの重さが丁度いいと思ってる人にはちょっと重さが足りないかもしれない。でも、「FAMILY」を2度作るつもりは毛頭ないし、次にそういうのを作るときはもっとトコトン行くと思います。そういう意味では、今回のアルバム僕は納得行ってますけど、“軽め”って雑誌のインタビューとかで言ってたんですけど、そう言わないほうがいいのかなとちょっと反省しました。」

ーそれはなぜですか?

スガ「感想とか送られて来て、読んだりすると、この人、俺が“軽い”って言わなければ、軽いって思ってないんだろうなって言うのが多いんですよ。自分の中では軽く作ってあるけど、重量感としては相当あるから。」

ー確かにそうですよね。「FAMILY」に比較しての軽さって事だろうし。

スガ「だからね、そういう先入観はすごく怖いなと思って。でも、インタビューでなんにも言わないのは、インタビュー受ける意味がないし。何を話したらいいんだろうって少し思いましたね(笑)」

ーインタビューする側としても考えさせられる話ですね。

スガ「これは凄く重いアルバムですって言ってたら、たぶん聞いてる人の見方も変るんじゃないかなって考えると、僕の主観が悪い影響を与える時もあるのかなって・・難しいですよね。」


ーアルバムのテーマとして“コミュニケーション”を描くってことと同時に、アルバムそのものが聞き手とのコミュニケーションをとるものという部分もあると思うのですが?

スガ「3枚のアルバムのトータルコンセプトはコミュニケーションがテーマっていうのはずっと変わってないと思います。
デビューして1年半くらいは結構まめにファンレターを読んであからさまに誤解をしている内容に対しては返事を書いて、そういう趣旨ではないですって、注釈文章を送ってあげたりしてたんですよ。でもある時期から何も聞きたくなくなって。9割以上の人が応援してくれているのはわかっているんですけど、、中には相当酷いのもあるし。そういうのは見分けがつかないじゃないですか。で、そういうのは見たくないんで仕方なく、あとの9割に目をつぶるしかないのかなって。制作をする上でそういうコミュニケーションは必要ないのかなって思いますしね。」

ー制作した作品の中に自分の思いを込めて、伝えようとする意思みたいなことは?

スガ「それも全部伝わるとは思ってないし。
でも思いを込めるのは徹底的にやりますよ。でもそれは伝わらなくてもいいんですよ。その人なりの解釈でいいと思うんで。
誰にも伝わらないと、もっと解りやすくって話になってくると、そぎ落とさなければいけない部分も出てくる。そこを捨てるのは出来ない。
かと言って、ただ分かる人にだけわかればいいっていうつもりは全然なくて。
自分が作った作品をわかってもらうために、インタビューとか受けてるんですが・・それもなんか不安になっちゃうんですよね。
微妙なニュアンスも含めて伝えていくしかないのかもしれないけど。」


―今回、オール・スタンディングと椅子席と会場が色々混ざってますね。

スガ「選んでもらえるように混ぜたんですよ。たぶん、初めての方は椅子席のほうに来るんじゃないですかね。地方はほとんど椅子席で大都市だけ2パターンなんですけど、相当違うと思います。やる僕らもライブハウスなら攻撃的になるし、椅子席は友好的になるし、同じ曲やるにしても心持が違う。じっくり聞きたい人は椅子席。とにかくぶつかって踊りたい人はライブハウスって。」

―それぞれの場所の特色が顕著になりますか?

スガ「そうですね。東京は批評好きだから、じっくり隅々まで聞いてやるよっていう感じが強いですね。大阪はどっちかっていうと、なんでもいいから次ぎやってくれよみたいな。人の曲でもいいからさぐらいの勢いがある(笑)」

―Sweetの曲を実際にステージでやってみて何か感じた事はありますか?

スガ「とにかく曲が難しいです。グルーブ1つ作るのにもえらい時間がかかった。僕は安心してたんですよ。自分が弾いたものだし、そんなにリズムに凝ったつもりもないから、いっせーのせっでやったらすぐ出来ちゃうだろうなって。とんでもない話で、凄い大変でした。」

―今後もやる内容は変わっていくと思いますか?

スガ「やってみないとわかんないですけど、同じ事の繰り返しはやりたくないので、新しいモノをどんどん作っていきたいし、やったことのない世界観とかやり方を試したいなといつも思っています。

人間を描いていくというテーマ自体は変わらないと思いますが、人間を描きたいから音楽をやっているのか?と言われたら難しいところですね。それだったら他の手段でもよかった訳ですから。
音楽を選んだのは何故かってことは何か理由があるのかもしれない。なんで音楽をやってるんだって問いは、なんで生きてるんだっていう問いと似てるんですよね。

―ツアー以降の活動で目標とかありますか?

スガ「とにかく、いいアルバムを作るっていうだけですね。毎年ずっとそれが目標なんです。
いいアルバムの基準は自分の中にあるものなんだけど、でも、自分の中の満足度が大きいと、まわりの反応も大きいんですよ。それは信じてるっていうか、その共通項が無くなったら、わかるひとにしかわからない世界になっちゃいますから、そこは普段からいろんなモノを吸収してるか、してないかで決まるだろうから、その感覚は常に持っていたいと思っています。」
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