クリープハイプ尾崎くんの『祐介』読んだ! | スガ シカオ オフィシャルブログ コノユビトマレ Powered by Ameba

クリープハイプ尾崎くんの『祐介』読んだ!


遅ればせながら、クリープハイプ尾崎くんの小説『祐介』を読んだ。

執筆中に一緒に飲んだ時、尾崎くん自身が「自信と手応えある」って言っていたので、時間のある時にちゃんと読みたかった。

素晴らしかった。本当に。
おれはなんとなく、若いタレントさんや文章の上手な著名人さんが書く小説っていうものを、なんかの賞をとったりすると読んだりするんだけど、すごく面白いとは思う。だけど、そこに文学を感じることがあまりない・・・。
才能あるなぁとか、面白いなぁっていうのと、文学が押し寄せてくるのとは、うまく説明できないけど圧倒的に別物な気がするのだ。おれにとって文学って、波動みたいなものだから。

『祐介』っていう小説は、もうすごくヒリヒリしていて、脳が低温火傷するんじゃないかってくらい言葉が研ぎ澄まされていた。
処女作だから頼りない部分ももちろんあるんだけど、もう炎のような創作意欲がそれを感じさせない。書いてやる、伝えてやるっていう気持ちがすごい。

読後、何か巨大なエネルギーが体の中を通り抜けた感じがした。そして、それこそおれが思う文学なのだ。

尾崎くんとは実は地元が同じ地域だ。もちろん年代は相当離れているんで、全く共有した時間はないんだけど、はじめて彼の歌詞を読んだ時に、気持ち悪いくらいの疑似感が自分の中にあった。同じ小説家や映画が好きなのかなとか、その程度にしか思っていなかったが、実際話してみてその疑似感は、おれらの地元に流れる独特の空気だったことが判明した。

小説では、食えないミュージシャン、風俗嬢、暴力、血、貧乏、家族、汚物、裏切り・・・そういったものの中で、消えていく希望の光が花村萬月ばりに見事に描かれている。その景色や空気が、おれ的にはまたもや『え?これって、見たことあるぞ』な感じ満載で、もう主人公と一緒にゲロ吐きそうになった。

この小説が大きな賞をとったり、100万部売れたりする世の中だったら、おれは狂喜乱舞すると思う。残念ながら・・・多分だけど・・・100万部は売れないでしょう。でもそんなことは問題じゃない、おれの心の中にはしっかり素晴らしい小説として刻み込まれましたよ!
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※これ読んでからクリープハイプのアルバム『世界観』聴くと、もう日常に戻れなくなる 笑