実話!ジャンク小説【ヤグルトさん】 | スガ シカオ オフィシャルブログ コノユビトマレ Powered by Ameba

実話!ジャンク小説【ヤグルトさん】

『入院ヤグルトさん』
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白内障という目の病気は、お年寄りにはよくある病気らしい。
20分くらいの簡単な手術で、人によっては日帰りで帰れる。なんでも濁った水晶体を、人工のものに入れ変えるのだそうだ。

というわけで、ヤグルトさん(81歳、O型、実母)が白内障の手術をすることになった。
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普段は強気で傲慢なヤグルトさんだが、今回ばかりは目の手術が怖いらしく、電話をしてきては麻酔の量を多くするよう医師に頼めとか、入院は食事がまずいからやだとか、帰りはタクシーを用意しろだの、まぁめんどくさいことこの上ない。
普段あまり病気をしたことがない人は、治療することにも慣れていないのだ。
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全国ツアーの合間を縫って、入院の付き添いをしてきた。

朝9:30に手続きをして、10時に入室。入院に必要なものをコンビニで買い揃え、引き出しに収納した。こうゆう入院のあれこれは父親の時で慣れていた。部屋は2人部屋、日当たりのいい高層階だ。
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入院したヤグルトさんは、ベットから降りたり上がったり、まるで動物園のゴリラみたいにそわそわ落ち着かない。
テレビをつけたかと思えば、毛布をたたんで、お茶を入れたかと思えばカバンの中を整理し始めたり、見てるこっちがイライラしてくる落ち着きのなさだ。よほど手術が怖いらしい。

そうこうするうちに、昼食が運ばれてきた。
あまり美味しくなさそうなドロっとした感じのナポリタンだ。量だけがかなり多い。
それにハーフカットしたバナナ、牛乳、スープ。まぁ病院食とは、こんなものだろう。
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ヤ「あら、なんか量がおおいわねー。これ男の人用じゃないの?」
ヤ「もう、食べきれないわ。」
ヤ「入院してるお年寄りが、こんなに無理!」
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じゃ、残せばいいじゃねーかと思いながら、ここはスルー。
どうせブツブツ言いながら全部食べるに違いないと思っていたら、ちょっと目を離したすきに、やっぱり完食していた。
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シ「全部食ってんじゃねーかよ」
ヤ「朝ご飯食べてないからかしら・・・きっとそうね」
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とか言いつつ、なんでバナナが一人一本じゃないんだとか、オカズがもう一品あれば・・・とか文句言ってるし、要するにもっと食べたいらしい。
皿を舐めるようにキレイに食べて、お茶もスープも一滴残らず飲んだ後、今度はお腹いっぱいすぎて気持ち悪いとか言い出して、はい、殺意、マジでイラっとしました。
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明けて翌日、昼の1時から手術が始まった。
手術といっても実質10分もかからない簡単なものだ。傷口も2ミリとかそうゆう程度で、何か大きな問題でもない限り比較的安全で症例も多い手術だ。

が、ヤグルトさんは点滴を打たれ車椅子に乗せられ、真っ青になりながら手術室に向かった。
おれの励ましの言葉もまるで届いていない。数時間にも及ぶ、世紀の大手術に向かう様相だ。
ヤグルトさんは、そのままエレベーターの中に吸い込まれていった。
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20分ほどして、1Fの自販機から病室に帰ってくると、海岸に漂着したトドみたいな格好で、ヤグルトさんがベッドに打ち上げられていた・・・じゃなくて、寝転がっていた。
どうやら時間通りに手術は無事終了し、看護師さんが連れて帰ってきてくれたようだ。
わずか10分足らずの無痛手術で、よくここまで憔悴できるなとおれは思ったが、一応優しい声がけをした。

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シ「どうだった?うまくいってよかったね。」
返事がない。憔悴している。

ヤグルトさんは目を閉じたまま、ボクサーが15ラウンド戦った後のような、全てを出し切った感じの口調でこう言った。
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ヤ「終わったわ。。。手術成功よ。。」
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いやいや、15分くらいしか経ってないし。
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まぁ、でも無事終わってよかったです。
ちなみに病院食は6食とも完食で、看護師さんも「お元気そうで・・・」と、苦笑いをしていました。
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ヤグルトさん、お大事に。
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