Stay with me 1
素人が書いた妄想小説です
嵐のにのあい 非リアル設定です
BLチョロッとだけ
💚
「はぁ…やっと片付いたかな…」
そう言いながら、段ボールを折りたたむ
段ボールはこれで最後。
前の家からかなり色々と処分してきたとは
いっても、慣れない事をしながらだと
なかなか進まない。
数日かけて、ようやく全ての段ボールを開け、
片付ける事が出来た。
これで一つ気にかかっていた事が終わり、
少しスッキリした…。
「あとは…」
綺麗になった机の上に
古いノートと新しいノートを並べる
古いノートはじいちゃんから受け継いだ物。
その中にはこのマンションについての
詳しい事が書かれていた。
燃えるゴミは月水金の週3回、
燃えないゴミは週1回という基本的なものから、
トイレが詰まった時や、鍵を無くした時に呼ぶ
業者の電話番号など、このマンションの
管理人をするには必要な、いわばマニュアル本。
じいちゃんはマニュアル本なんて意識なく、
ただ覚え書きやメモの為にこのノートを
使ってたみたいだけど…。
でもマンションの管理人なんて
やったことのない俺にとったら
とても参考になるノートだ。
それにそこに書かれているじいちゃんの字を
見ると、やっぱり込み上げてくるものがある…。
俺、じいちゃんっ子だったしな。
このマンションの管理人をしていた
じいちゃん…。
昔はよくこのマンションに遊びに来てたっけ。
……じいちゃんは小さな管理人室に
いつもちょこんと座っていた。
俺がいくと『101号室にいます』って
札を出して、自宅にしている101号室に
連れていってくれる。
…といっても管理人室と101号室は
すぐ近くなんだけどね。
今回、俺がここの管理人になるということで
今まで住んでいた所を引き払い、
じいちゃんが暮らしていた
この101号室に俺が住むことになった。
この部屋にも管理人室もじいちゃんがいた
形跡が至る所にあって、
それを片付けていくのにも時間がかかった
理由……。
……じいちゃんは…
半年前に亡くなった…。
亡くなる前は、普通に管理人の仕事を
していたらしいから、本当に突然…。
急に会えなくなるなんて思ってなかった。
じいちゃんっ子だったとはいえ、
社会人になるとなかなか会いにこれなくて、
もっと会いに来れば良かったと、自分を責めた…。
色々な手続きをし、ようやくじいちゃんの部屋を
片付けようとここにやってきた時、
俺宛の手紙を見つけた。
じいちゃんはもし自分に何かあった時の為に、
だいぶ前からこの手紙を用意していたみたいだ。
…その手紙は、俺への思い出話から始まり、
もし自分に何かあったときはこのマンションを
引き継いで欲しいという事などが書いてあった。
そもそもこのマンション自体も
じいちゃん所有のもの…。
それに伴う法的手続きの為、
弁護士さんの連絡先も入っていた。
連絡をとった弁護士さんはとても良い人で、
じいちゃんとも仲が良かったらしく、その人は
まず、俺の意思を尊重すると言ってくれた。
今までの仕事とは畑違いの
このマンションの管理人という仕事…。
不安がないわけじゃない…。
だけどじいちゃんが俺に引き継いで欲しいと
いうならば、その意思に沿おうと思った。
仕事を辞め、じいちゃんの遺産として
このマンションを受け継ぎ、
そのまま管理人として働いて数日…。
まずは住人の顔を覚えようと、
朝はマンションの周りを掃除しながら、
出勤、通学する住人へ挨拶をし、暇さえあれば
マンションの中を歩きながら、
自分が新しい管理人だと声をかけた。
存在を知ってもらい、困っている事や
要望などはないか聞いて回った。
その甲斐があって数日で、ほぼ全員の住人と
顔を合わすことが出来、無事俺が新しい管理人と
なったことを認識してもらえたんじゃないかと
思う。
「……でも、あと一人まだ会ってない人が
いるんだよなぁ……」
俺は新しいノートを開きながらため息をついた
このノートは俺が用意したもの。
ここに知り得た住人の簡単な家族構成や、
要望などが書いてある。
いわば俺が住人達を知る為の覚え書き。
ただ、家族構成なんてかなりの
プライバシー情報だから普段は管理人室の金庫に
閉まってあるけどね…。
そこにまだ真っさらなページがある
場所は『305号室』
名前は『二宮和也』
この情報だけは、契約書でわかったけど、
どんな人なのかが一切わからない…。
『職業』の欄が空欄なんだ。
こんなんで、じいちゃんは部屋を貸すことを
オーケーしたの?と不安になったけど、
今まで家賃を滞納したことはないみたい。
昼間305号室の前の廊下からさり気なく
中の様子を伺おうとすると、いる気配は
感じるんだけどなぁ…。
*****
305号室の二宮和也さんという人と
なかなか会わないまま数日が過ぎた。
気にはなっていたけど、そのうち会えるかな、
そう思っていた時、突然二宮さんと会う事が
出来たんだ。
…いや、会うというよりは『見かけた』かな。
その日、俺は次の日の朝食に食べるパンを
昼間うっかりスーパーで買い忘れ、
コンビニに買いに行った帰りだった。
月と星が出ていて綺麗だなと
なんとなくそのまま近所を散歩し、
戻ってきたのはだいぶ遅い時間になっていた。
マンションの入り口にタクシーが止まっていて、
中から出てきたのはスーツを着た
見慣れない男性。
そのままマンションに入り、管理人室の前を
通って、声をかける暇もなく、
一階に止まっていたエレベーターに乗った。
どの階に止まるのかを見ていたら
思った通り、3階で止まった。
「…あの人が二宮さんかなぁ…」
…たぶん、きっと…そうだと思う。
それに今見かけた姿…。
スーツを着ていたけど、そのスーツは
やけに光っていて、中のシャツも少し光沢が
あってテロンテロン…。
うん…俺が毎朝声をかけるサラリーマンが
着ているスーツとはだいぶ違う…。
…ということは、二宮さんのお仕事って…
『夜の』お仕事…なのかな?
夜にお仕事に行って、明け方俺が
掃除をする前に帰ってくるから会わなかった…。
それなら納得だ。
俺はノートの『305号室』のページに
『夜のお仕事?』ってハテナ入りで書き込んだ