千夜一夜物語 48 | 静かな夜に

千夜一夜物語 48

素人が書いた妄想小説です

嵐のにのあい  非リアル設定です

BLチョロッとだけ




『………国王のハーレムに入り、一夜の相手に
もし選ばれてしまったら……その子は
二度と朝日を見ることはないだろう……
朝日を見る前に、その子の首は
身体を離れているからだ……
そんな黒い噂のあった国王だったが、
実は国民の為に尽力を尽くす優しい国王だった……
またその国王が毎日穏やかに過ごしていけるのも、
側に片時も離れない国王を愛する人物が……』


……
「………シュンスケさん…なに書いてんの?」

シュンスケさんが机に向かって一生懸命に
書き物をしていたため、悪戯心で覗いてみたら、
なんだか無視できないような文章を書いている……
その内容ってさ……もしかして……
思わず語気も強く聞いてみるが
「あれっ?…カズくん帰って来てたんだ…
おかえり~」
あまりにも柔和な態度で返された…
「いや、だからさ…」
「あっこれ?この国の国王様のことだし、
もう少しで産まれてくる子どもが大きくなったら
寝る前のお話として聞かせてあげようと思って……」
まーちゃんとカズくんを思い出すよねぇなんて
ニコニコしながら言ってるけど…
「…なら、前半部分だけでいいんじゃない?
特に最後の一文なんてなくてもいいじゃん……」
…明らかにこれって……

「えぇ~いいじゃん…
カズのことも一緒に語り継いでもらおうよ~
姪っ子ちゃんか甥っ子ちゃんなんだし…
お話の中に自分の知ってる人が出てくるなんて
きっと嬉しいよ」
…なんてこっちもニコニコしながら言う
「……マサキ様……」
俺一人が頭を抱え込み、
マサキ様とシュンスケさんは二人で会話を始めた…

マサキ様は
…カッコ良く語り継いでもらう為に
もっと頑張んないとなんて張り切っているし、
シュンスケさんは最近の街の様子をマサキ様に
伝えたりしている……

俺の家にマサキ様がいるなんて
なんか変な感じだ……



マサキ様と心も身体も繋がった後
怖いぐらいの幸せな日々を送っている

ジュンくんとは、次の日に噴水で会い
色々な話をお互いに交わした…
やっぱり俺が思っていた通り、あの時既に
ジュンくんとショウ様は良い雰囲気で
あの夜がきっかけで、二人上手くいったそうだ…
……まぁ、そうだよな…
ショウ様はあんなにジュンくんへの想いを
語ってたし……

それから、マサキ様と俺……
毎晩寝所に行って、二人色々と語り合うのは
変わっていない……
ただその後に…
もっと親密な時を過ごしているだけ…

……それが新しい日課となった頃、マサキ様から
ねぇちゃんとシュンスケさんについて話があった
一度帰って、俺が元気に過ごしている姿を
見せてあげようということと、二人がちゃんと
結婚式をあげたのかの確認をしようと…
その気遣いに嬉しくなって、帰る準備をしていたら
「勿論、俺も一緒にいくけど…」と
国王だとわからないように変装してついてきた

家に帰るとまず、ねぇちゃんに相談もなく
勝手に家を出た事を凄く怒られたけど
マサキ様が上手く言ってくれたお陰で
事なきを得た…
最初ねぇちゃんはついてきたマサキ様が
何者かわからず、普通に俺の友達だと思って
接していたから、実は国王様だと知った時の
驚いた顔は今でも忘れられない…
シュンスケさんには、
俺から聞いた物語の感想などを伝えたりして
意気投合…

それから、マサキ様も一緒にこれまで数回、
お忍びで実家に顔を出している

そして、やっぱり結婚式を挙げていなかった
二人の為に
俺が貯めていたお金で結婚式を挙げた

本当はマサキ様がお金を援助するって
言ってくれたんだけどね…
既に家族ぐるみで会っているようなものだから、
何かしたいって……
だけど、断った…
やっぱりいままで面倒を見てくれた
ねぇちゃんとシュンスケさんの結婚式は
御礼の意味を込めて俺が挙げたかったんだ…
マサキ様に説明したら、わかってくれて
ほっとした
そして、その結婚式に招待したら
めちゃくちゃ喜んでくれて、当日弟の俺より先に
泣き出してしまったくらい……



ずっと…こんな幸せでいいのかな…と思う…

「……カズ…何考えてるの……?」
寝所のベッドの上……
いつものようにさっきまで汗だくになりながら
身体を動かしていたマサキ様が
少し眠そうな声で聞く…
「……幸せすぎてちょっと怖いなと
感じてただけです」
そう言いながら、マサキ様の唇に
自分の唇を合わせる…
すると…俺も…と言いながらマサキ様の唇は、
俺の頬や耳たぶに優しく触れる…
「……怖くなくなるぐらい…一緒にいよう……」
と、マサキ様が俺を抱きしめる…



「ねぇ……カズ……お願いがあるんだけど……」
「なんですか…?」
「…シュンスケさんが語り継いでくれる時にさぁ…
『国王は愛し愛されている恋人がいて、
毎日毎日幸せです』って言って欲しいからさぁ…」
「……はい?」
そう言うと、俺に覆い被さり
さっきの眠そうな声と違い
代わりに男の欲を纏った瞳で見つめられ…
「……もう一回………」
その色気を含んだ一言を耳元で囁いた…
俺がどんなにその瞳と声に弱いかなんて
マサキ様は知っているのかいないのか…

マサキ様の首に自分の両手を巻き付け、
仰せのままに…と囁くと
マサキ様の片方の口角があがる…



あぁ…やっぱり幸せすぎて怖いくらいだ…


……でも…
……さっきマサキ様が言ってくれたように
ずっと一緒にいればいい……

…このまま…ずっと……




『まだまだ、物語は終わらない…
これは千夜も……それ以降も続く……
長い長い物語……』



Fin