千夜一夜物語 42 | 静かな夜に

千夜一夜物語 42

素人が書いた妄想小説です

嵐のにのあい  非リアル設定です

BLチョロッとだけ




「あの箱…ですか…」
部屋の奥…
俺が箱を落とし、中身を見てしまった事を
思い出した
確かあれは
『首をはねられた若者の…大切にしていたもの』
…じゃなかったかな…
その中にこのジュンくんのネックレスをみつけて、
もしかして、ジュンくんはもういないのかと、
カァーとなって
国王様を追い詰めるような言い方を
してしまったんだから……
今ではそれは誤解とわかったけど…
じゃあ、あの装飾品の数々はなに?

「…あの箱はね…『再生の箱』なんだ…
ショウちゃんと二人で名付けたの……」
「再生の箱……?」

国王様が言うには…
一番最初に、ハーレムに連れてこられた女性は、
家に常にお金が失く、家族が無理矢理お金と
引き換えにハーレムに連れてきたそうだ……
今までにも散々辛い思いをしてきたのに
最後は家族に裏切られた…
そんな絶望の中、こっそり逃がしてあげようと
した国王様に、その女性はたくさんの感謝の言葉を
残し、自分は新しく生まれ替わる気分だと語り、
…そして、祖母から貰ったという形見の指輪を
自分の気持ちとして遺していったそうだ…

そんな思い入れのある指輪を二人は無下には出来ず
大事に箱にしまった……

それから、なぜか国王様とショウ様が人を
助ける度にその人達は自分の代わりとして
装飾品を置いていくんだそうだ…
そして、その助けた人達は女性に限らず
男性も含まれた…

なぜだかサトシ様は困っている人に
遭遇する確率が高く、
そのたびに国王様とショウ様に
繋げるようにしていた…
すると、男女関係なく『若者が消える』と
いう現象に拍車がかかったそうだ


「国王様とショウ様が助けた人達は……
自分がこの国にいたという証を…
遺したかったのかもしれませんね…」

自分の境遇を憂い、親身になってくれる自国の王…
本当ならそんな優しい国王の元、ずっとこの国で
暮らしたかったはず…
だけど、境遇がそれを許さず、隣国に逃げたり
身を隠さなきゃならない自分…
大事に身につけていたものを、自分の代わりに…
と置いていったんじゃないだろうか…
それに、その思い入れのあるものを置いていく
ことで、これからは新しい自分として生きていく
ことのケジメにもなった……


「……その『再生の箱』は俺たちにとって、
これから新しい人生を歩んでいく人達の
象徴になった…」

あの装飾品は、その数だけ国王様達が
助けてあげた人達の想い……

「その箱に俺がジュンのネックレスをいれた…
ずっと持っていると、記憶が戻ってしまいそうだし…
このままジュンは…記憶が戻らなくてもいいから…
俺の側に………ここから俺と新しい人生を……って
本当に最悪だな…」
ショウ様がうなだれる……

「…ショウちゃん……わかるよ……
俺だって好きになった人には…どうしたら側に
いられるか考えるし、少しでも一緒に過ごす事が
出来たら嬉しい……多少強引だったとしても……
そこは…どうしても好きになってしまったんだから…
しょうがない……」
国王様はショウ様の想いを否定せず、共感した…

俺も……好きになったら一緒にいたい……
ショウ様…俺だって…わかります…
俺だって…国王様のこと……

そう思いながら国王様を見ると、ちょうど国王様も
俺の方をみていて、視線が絡む
考えていたことが、国王様の事だったから
目が合ったことに凄く恥ずかしいというか……

すぐに国王様から目線を反らしてしまった……


「……それで…2日前ぐらいからジュンが
頭の痛みを訴えるようになって……」
「そうなんだっ!カズっ!
俺、記憶が戻ったんだよっ!」
今までショウ様の後ろに立ち、一言も
話さなかったジュンくんがいきなり話始めた
「ジュンくんっ!」
思わず駆け寄り、早く言ってよと文句を言うと
「…いやだって、
もっと深刻そうな話をしてたから…」
なんて、しれっと言うジュンくんは
なんなの本当に…

「記憶が戻ったのは今朝なんだ…
朝ジュンの目が覚めると
なんで自分はここにいるんだと質問し始めてな…」
「……ショウちゃんと過ごした日々の記憶は…?」
国王様が恐る恐る聞く
「…それが昔の記憶が戻っても、俺と過ごした記憶、
消えてなかったんだ……」
それを聞いた国王様はよかったねぇと
自分の事のように喜んだ
「…それで…ジュンに今までの事を説明して、
直ぐにカズのことも思い出して、
噴水にずっと行けていなかった事を
謝りたいって言ってたんだけど、
今日は隣国の国王をもてなす準備で手一杯…
それにまだ一人で行かせるのも心配だから
明日まで待ってくれと頼んだんだ…」

確かに今日は朝から王宮中がバタバタと
忙しそうだった…

「…だけど、カズがあの小部屋の前で、
力なく座っている姿が見えたから、もしかして
あの箱の中身を見たんじゃないかと…
きっと誤解をしていると、
急いで部屋にいるジュンを呼びにいったんだ…
本人を連れて話をした方が早いと思って…」

そこまでのショウ様の話を聞いて、
やっと気が抜けた
やっぱり話を聞きながら身体中に力は
入っていたから……
国王様の誤解も解けた…ジュンくんも見つかった

心が軽くなったはずなのになんで
俺の心はこんなにも重いんだろう……
横にいる国王様に目を向けた……