千夜一夜物語 39 | 静かな夜に

千夜一夜物語 39

素人が書いた妄想小説です

嵐のにのあい  非リアル設定です

BLチョロッとだけ




国王様が俺に向かって距離をつめてくる…
でもそれが今は恐怖でしかない……
どうしよう……悪い想像しか出てこない……

その時
「カズっ!」
と、俺を呼ぶ大きな声が聞こえた

呼ばれた方を見るとそこにはショウ様と……
「ジュンくんっ!!」

それは、ぱったりと姿を見せなくなった
ジュンくんだった
「えっ…なんで…いや、えっと……」
せっかくジュンくんに会えたのに…
聞きたいことは、山ほどあるのに…

今、俺の前に立っている
国王様が気になって仕方がない…

すると
「……カズ…ごめん…ちゃんと説明するから…」
とハァハァと肩で息をしているショウ様が
俺の両肩を掴む
額に汗も滲んでいるから、もしかしてどこかから
走ってきたの?
隣にいるジュンくんも同じように汗が滲んでる
なに?なんなの?

ショウ様がいつものバルコニーのベンチに誘導する
そして、国王様にも同じようベンチに促し、
ちょっと距離を取りながら国王様と俺は
となり同士に座った

聞く準備が整った所でショウ様が
ジュンのことも気になるだろうけど、順番な…と
付け加えてから話を始める……

ショウ様は、国王様が王女様を侍女さんに
引き合わせた後、
そのまま国王様と俺のやり取りを一部
聞いていたらしい……

「まず……カズが聞いていた国王の噂…
『一晩過ごした後首をはねる…』
という黒い噂は…マサキと俺が…
わざと流したんだ……」
「…えっ…?」
なんで?なんでわざとそんな国王様にとって
印象悪い噂を自分達から流したの…?
慌てて隣に座る国王様を見る
国王様は、さっきの怖い表情から変わって
少しだけ困ったような表情をしていた…

「……俺が国王になった時……俺の為にって……
あのハーレムが作られたの……」
国王様が言いにくそうに語る…
「……だけど、…大臣とか、女性を紹介して
お金を貰いたい役人とか…中には自分の娘を
ハーレムに…なんて…そんな人達が…女性を
無理矢理連れてくるから……いつも目の前で
泣かれたり、凄い顔で睨まれたり、無表情で
見られたり…今思えばあの表情は絶望した表情
だったんだね…」
……そんなの…可哀想だよね…と悲しそうに
国王様が微笑む…

その表情にギュッと胸を掴まれる感じがした…

ねぇ……
無理矢理連れてこられた女性達の気持ちを
可哀想だと言う貴方はなんて優しいんだろう…
他人の気持ちにこんなにも寄りそうなんて…

……だけど…
目の前で泣かれたりする貴方の気持ちには…
誰が寄り添ってくれたの…?
自分がハーレムを望んだわけではないのに、
無理矢理連れて来られた女性達に目の前で泣かれて、
睨まれて、絶望した表情なんて向けられて……
ねぇ…時には酷い言葉とか浴びせられていない?
そんなの絶対、心が痛いよ…
そんな貴方に……誰が……

「…だからあの噂を流した…少しでも怖がられれば
少なくとも自分の娘をハーレムに入れようなんて
人物は少なくなるかもしれない…と思って」
ショウ様がゆっくりと話す

それが一晩一緒に過ごしたら首をはねられると
いう噂の真相……

あまりにも事実と違い、少し戸惑う

「えっとじゃあ…若者が消えるというのも
さっきの話と同じただの噂…?」
若者が消える=首をはねられていると
同じって事だよね?
俺が聞くと
「それは本当だな……」
ショウ様がいやにはっきりと言うから驚く…
黒い噂の半分は嘘で、半分は本当ってこと…?
どういう意味……?

「…ハーレムに……連れて来られた女性は
緊張しているし……
少しでも緊張をといてあげようと身の上話を
聞くんだ……」
そうすると、借金のかたに自分がハーレムに
来たけれど残してしまった家族が気がかりだとか、
実は恋人がいたとか…中には今までの生活が
悲惨だったから、ハーレムに来られて夢のようだ…
と感謝されたこともあったかな……と
国王様が説明する

「俺は…無理矢理…そんな女性達を
……抱いたりしたくないから……
その身の上話を聞いて…助けてあげるんだ…」
「…助けてあげる…?」
困惑した俺にショウ様が続ける…

「家族が気がかりな女性には、家族と共に
離れた場所へ引っ越す手伝いを……
借金のかたにハーレムに入ったなんて近所で
直ぐに噂になってしまうからな…
それと…恋人がいると言った女性にはその相手と
暮らせるようにこっそり隣国へ行ける手筈を……
今までの生活が悲惨なら…このまま王宮内で仕事を
与えて働いてもらう……
その結果……『若者が消える』という噂が
立つようになった……」


……『今宵の御奉仕に…と国王様の寝所に
呼ばれた若者は…二度と姿を見ない…
それは首をはねられているんじゃないかと
いう噂があるから』

最初に聞いた街で流れていたこの噂は
正しくなかった
正確に言えば、寝所に呼ばれた若者は
国王様とショウ様の寛大な采配によって
第2の人生をスタートさせていた
そして、首をはねるというのも、
これ以上悲しむ女性を作らないための優しい嘘


ショウ様の話に納得しようとして小さな違和感が……
「…あれっ…じゃあ…えみちゃんは…?」
「えみちゃん?」
俺は二人に幼馴染みのえみちゃんの事を話した
許嫁との結婚が決まっていたのに、ハーレムに
入ったこと…それにその数日後には亡くなったと
遺品を持ってきたこと……
そして、両親が酷く落ち込んでいたということを…

話終ると二人ともあぁ~と揃って声を出す
「カズ…これはまた違ったパターンでね…」
とショウ様が話始める……

要約するとこうだった…
王宮で下働きとして出入りしていたえみちゃんは
いつしか王宮内で働く一人の男性に恋をした
幸運なことにその男性と恋仲になり、
いつしか二人は結婚を考えるようになる
……しかしそんな二人に持ち上がった
えみちゃんの結婚話……
俺は許嫁だと聞いていたが、そうではなく
えみちゃんの家はこの相手の家に借金があり
えみちゃんが結婚することで、無かったことに
する予定だった……
それを聞いたえみちゃんは凄く悩んだそうだ…
家族は助けたい……だけど好きでもない人と
結婚なんて絶対に嫌だ…
……でも……

そんな時……救世主が現れた………