千夜一夜物語 36 | 静かな夜に

千夜一夜物語 36

素人が書いた妄想小説です

嵐のにのあい  非リアル設定です

BLチョロッとだけ




歓迎のもてなしが進んでいくと、
ある女性がショウちゃんに近づいていくのが見えた
なんだか二人で深刻そうな話をしている…
何があったんだろうとその二人を見ていると
それに気づいたショウちゃんが手招きをする
「…ショウ、どうしたの?」
「…国王様…こちら王女様の侍女の方だそうだ…」
ショウちゃんが隣の女性を紹介すると、
その侍女さんは頭を下げ、
「いきなり、申し訳ありません……
まずはショウ様に相談しようと思いまして…」
そう言いながらショウちゃんの顔を見る…
俺に言っても良いのかショウちゃんの反応を
伺っているみたい…
ショウちゃんが声を潜め
「……王女様が…いないそうだ……」
とゆっくり口を開いた
「えっ!そんなの大変じゃないっ!
早く探さないとっ!!」
俺が慌てて、探しに行こうとすると
マサキマサキっ!とさっきよりも小さな声で
俺を呼ぶ
「もうっ!なに?早くっ……」
「王女様な……もしかしたら…
マサキ…国王の寝所にいるかもしれない…」
ショウちゃんからの言葉が一瞬理解出来なかった
だけど、侍女さんが
「…本当に御迷惑をおかけして申し訳ありません
我が王女は…思い立ったら直ぐに行動に出る
性格でして…」侍女さんが懸命に謝っている

「……どういうことですか…?」
「先程ご挨拶をした際に、王女は…一目見た
国王様の事を大変気に入っていらっしゃいました
私だけでなく、側近のショウ様や、
他の方にも国王様の事を聞いてまわっていました
……そして……」
そこで、躊躇うように侍女さんは口を閉ざした…
そんな様子を見たショウちゃんが……
「……仲良くなるためには、多少強引に行かないと…と、近くにいた警備兵に寝所の場所を
聞いていたらしい……
それも『…国王様が二人きりで話が
したいと言っていた』と言いながら…」

ショウちゃんがそう話すと、侍女さんが
申し訳ありませんと何回も謝りながら頭を下げる…
…もう、その姿が見ていられない…
「…じゃあ、三人で王女様を連れ戻しに
行きましょうか…
侍女さんもそんなに謝らなくても
大丈夫ですから……」
そういうと、ありがとうございます…と
言いながらやっと頭を上げてくれた

三人で寝所に行く…
本当にいるのかなという思いもある…
だって、隣国の国王の寝所だよ
別に俺はそれでその王女様を怒ったり、
王女様の父親である国王様に言って
この今の友好関係をどうにかしようなんて
微塵にも思ってないけど…
普通だったら…というかもし他の国で
こんなことやったら、直ぐに国同士に
亀裂が入ったりするよ

……いないと思うけどな……


…それと……
今日はカズを自分の部屋で休むように
言っておいて良かった…
もしカズと王女様が鉢合わせて、またカズに
変な誤解を与えるようなことはしたくないし……

その内に寝所の前までたどり着く
ショウちゃんと侍女さんには、
とりあえず廊下で待機してもらい、
俺だけが扉を開け中に入った…


いた……


そこには寝所のベッドの上に座っている王女様が…
俺は部屋の中に入り、声をかけた

「…王女様…ここにいらしたんですか?
……侍女さんが探していらっしゃいますよ……」

このまま穏便に、何事もなくこの王女様を
この寝所から出ていってもらわなくては…
ゆっくりと近づく
この子は……男のベッドに女性が座ると
いう意味をもう少し考えた方がいい…
……もしかして、考えているから座っているのかも
しれないけど…

「…だって…お父様はお酒を飲みながら、
難しい話ばかりしているんですもの…
退屈で…退屈で…」
と、可愛らしく微笑んだつもりなんだろうが、
今貴女が座っているそのベッド
いつもなら、カズと俺がいるベッドなんだよ
俺がカズに膝枕をしてもらって、
愚痴聞いてもらって
そのあとには二人一緒に眠るベッド…

なんだか二人のあの時間と場所が
汚されているような気がして凄く嫌だ……


でもそれを顔を出さないようにしないと……
「……確かに…難しい話は…退屈だよね…」
なんとか冷静に会話を続ける

すると
「…でも…ここに来たのは…ただ退屈だったから…
だけじゃないんですよ……」
と言いながら王女様は俺の腕を引っ張った
いきなり引っ張られたものだから、バランスを崩し
王女様に覆い被さるような体勢となってしまった

ごめんっと慌てて起き上がろうとするも
腕を掴まれて起き上がれない
きっとよほど自分に自信があるのだろう
拒まれるなんて微塵も思っていない表情…
王女様の瞳が艶やかに誘う

確かにこの王女様は美人なのかもしれない
……けれど、俺には少しも魅力的に感じないんだ

今俺が思うことは、いかに迅速にこの王女様を
外に待機している侍女さんに引き渡すかということ
あまり、事を荒げたりはしたくないしな…

「……王女様…あまり軽率な行動は慎んだ方が…」
なるべく優しく諭す
「…軽率なんかじゃないですよ……
私…貴方に一目惚れしたんです……」
そう言って、掴んだ腕をなかなか離してくれない
困ったな…どうしようか…

そう思っていると、部屋の奥の方から
何かが落ちたような大きな音がした