千夜一夜物語 16 | 静かな夜に

千夜一夜物語 16

素人が書いた妄想小説です

嵐のにのあい  非リアル設定です

BLチョロッとだけ



ある日の午後、自分の部屋に戻っていた
ショウちゃんが執務室に帰ってきた
最近、お昼は部屋に帰っちゃうんだよな…
午後には戻ってくるけど…なにしてんだろ…?
でも、そのお陰で昼の間中、あの子を見ている事が
出来てるんだけど……

しかし、その日のショウちゃんはいつもと
違っていた
俺になにかを言おうとしては
言葉を飲み込んでいる
「…ショウちゃん…なにか俺に言いたいことが
あるんじゃないの?」
俺から話を振ると
「…さっき大臣が持ってきた話なんだけどね…
今夜…また…ハーレムから…御奉仕したい女性が
いると申し出があったんだ」
ショウちゃんが俺の顔色を見ながら話す…
……そうか……前回があるもんね……

「…今回はカシームからの申し出らしい…
だから…大丈夫だとは思うけど……」
カシームという男は、街で金貸しを
やっていたようで、ある時から大臣などに
顔が利くようになり、いつの間にか王宮で
働くまでになった…
……働くといっても、ずる賢く立ち回っているだけで、
時々ハーレムに…と女性を連れてきては
その見返りのお金をもらっているような人物だ……

「……もう…女性を連れて来なくて良いと
言ってるのに……」
思わずタメ息が漏れてしまう…
無理やり連れてきた女性達を抱く気なんて
さらさらない……

「……カシームは、暗殺とかを企てるような
頭のキレるタイプじゃない……
だから連れてくる女性は大丈夫だと思うけど、
二度とこの前みたいな事が起こらないように、
もう一度規律を確認しよう…」
ショウちゃんが提案する

ショウちゃんが1つずつ言う規律を
もう一度口に出して頭に刻む

一つ、こっちから近づかないこと
一つ、言動に少しでも違和感や不自然な部分があれば
すぐに離れること
一つ、どんなにその女性が気に入っても、
ベッドを共にするのは一晩だけだということ

特に最後…
「…もしその女性を気に入った場合、それ以後も
ベッドを共にする事になるだろう…
もし暗殺を企てるような奴がそれを知った場合、
その女性を言葉巧みに取り込み、利用しようと
するかもしれない……
その女性に危害を加えるかもしれない
……そんな時その女性がどんな行動をとるか
わからないだろ…?
……マサキが気を許して、信頼しきった人が
命を奪いにくるかもしれない状況…
マサキはそんなの…耐えられるか……?」

俺は頭をフルフルと横に振った
……また次にそんな事があったら流石に
立ち直れない…

「…だから、ベッドを共にするのは一晩だけだ…」
「……わかった…」


そう、ショウちゃんと取り決めを確認したのが、
お昼あと…
その後公務をこなし、夕食をとってから
寝所に向かう
警備も持ち物検査も厳重にするだろうから
あんな風にまた短剣を向けられることは、
まずないだろう……

…カシームが連れてくる女性達…
無理やり連れてこられるせいで、いつも泣かれたり
ビクビクされたり…

毎回、本当にごめんね…とやるせない気持ちになる…
だってその子達は、俺の事が好きで
抱かれにきたわけじゃない…
借金のかたに否応なしに連れて来られた
とかだからさ…

……そんなのが繰り返されると、自分という人間が
要らないもののように思えてくる
『国王』という器があれば、その中身は
だれでもいいんでしょう…って……

だれも『中身』の俺をみてくれない……

いつかこの空しさにも、慣れる日が来るのかな…


そんな重たい気分で、ショウちゃんとふたり
寝所の扉を開けた



そこに居たのは…
綺麗な服を身に纏い、緊張しながら佇んでいる
その子は……

いつも…
窓から見ている、あの子…だった……