千夜一夜物語 4 | 静かな夜に

千夜一夜物語 4

素人が書いた妄想小説です

嵐のにのあい  非リアル設定です

BLチョロッとだけ




「……カシームさん……俺…
男だって知ってますよね?」
確認せずにはいられなかった…
それにさっき自分でも、
“ガリガリ坊主だったカズか?”って
言ってたじゃん…
何を言ってるんだ…この人は……

「勿論知ってるさ……ハーレムは女しか入れない…
現に何人も俺が紹介した女がハーレムにいるしな…
俺は国王様の為に良い女をハーレムに献上し、
少しずつ自分の地位を上げてきたんだっ」
……偉そうに言ってるけど…
結局自分の力じゃないじゃん…
しかもそのハーレムに入れた女性っていうのも、
今の俺みたいに無理難題吹っ掛けて、無理やり
いれたんじゃないの…?

「……じゃあ『男の』俺が入れるわけないって
わかってますよね?」
そう問いただすと
「良い女を何人もハーレムに送ってるんだけど
ここのところその見返りがなくてなぁ…
見た目が女のお前をハーレムに送って、
脱がせたら男だった…なんて面白いと思わないか?
まっ、ただ美人の女なんて……
いつも同じじゃ飽きるからな…」

なに言ってんだコイツ……
「…それ……男とバレた瞬間…切り殺されますよね…
俺は勿論…俺をハーレムに送った貴方も……」
「…切り殺される前に、国王様を誘惑しちまえば
いいじゃねぇか……そういうの……得意なんだろ…?」
そう言ってまたあの蛇のような目がギラつく……

さっきの接客…見てたのか……

今になってねぇちゃんと先生が
忠告してくれていた事の意味が、身に浸みる……

「まぁ…お前がどうしても嫌だというのなら、
代わりを……あぁ……お前には姉がいたよなぁ…」
いかにもな言い方をして、白々しい……
……俺が断れないとわかってて言ってやがる…

「……わかりました……俺が行きます…」

先生との結婚が決まっているねぇちゃんを
ハーレムになんていかせられるわけない……

……ハーレムに入ってしまったら二度と
出てこれないし、何より万が一……
俺が国王との相手に指名されてしまったら……

……男だとバレたその瞬間……殺される…… 

生き長らえる為には、ハーレムに入り、
国王の目に留まらぬよう、ひっそりと
暮らしていくことしか……道はない


……どう転んでも……俺の人生…終わり……


俺は深いため息をつき……
「カシームさん……
ハーレムに入るのはいつですか…?」
と聞いた……
こういうのは、決心が鈍らない内に
行動した方がいい……
俺はカシームに、家族に書き置きを残させて
欲しいと頼み、一度家に帰った…

その書き置きには、ねぇちゃんが心配しないよう、
カシームの事や、ハーレムに入ることには触れず、
良い仕事先が見つかったから、出稼ぎに行くと
嘘を書いた…
そして、来月の結婚式には間に合わないかも
しれないけど、必ず式は挙げてくれと……その為に
貯金していたお金の隠し場所も書いておいた…

先生当てには、
ずっと俺達の面倒を見てくれたことの感謝と、
これからねぇちゃんをお願いします…と
書いて家を出た……

家の外には、カシームがいてそのまま俺は
王宮に向かう事となった……


****
途中の店で新しい女性物のストールと服を買い、
やっとついた王宮…
俺が生まれ育った街とは違い、王宮に近づくにつれ、
街も華やかになっていく……
そしてたどり着いた大きな門の前……
屈強な男達が見張りをしていた

この門をくぐってしまったら
2度と外に出られないんだろうな……
とまるで他人事のようにその大きな門を
眺めていた……

そして門番と話をしていたカシームが振り返り
「…話がついた……行くぞ…」
と声をかけられ、ゆっくりと扉が開けられる……

俺にとっては、豪華すぎる牢獄へ……
足を踏み入れた