千夜一夜物語 2 | 静かな夜に

千夜一夜物語 2

素人が書いた妄想小説です

嵐のにのあい  非リアル設定です

BLチョロッとだけ




この国は昔から、色々な人種が集まる為
小さな争いが絶えなかった…
中でも、強盗や人さらいなどは頻繁に起きていて
女子供なんて、昼間でも一人で出歩くのは
危険とされていた……

そんな中、野菜と果物を売って生計を立てていた
俺たちの両親は買い付けの為に出掛けた所で
強盗に襲われ、揃って命を落とした……
この国では、よくあること……
でも、それが自分の身に襲いかかるなんて
その日の朝には思いもよらなかった……

いきなり両親が居なくなってしまった…

親を失くした子供が行く施設なんて名ばかりで
そこで生活なんて出来ない程陳腐なもの…
このままじゃ、ねぇちゃんと二人…
道端で道行く人からお金を恵んで貰うか…
それとも身体を売るしかないか……と
思っていた矢先助けてくれたのが、
この先生だった……

先生は文字通り、俺たちが通う学校の先生だった…
俺たちの境遇を知り、直ぐ様自分の家に
呼び寄せてくれたんだ……
そして、俺たちが気を遣わないように
『先生の手伝いをする』と言う役目を与えてくれ、
先生の家の掃除、洗濯などの家事や、先生の授業の
調べものの手伝いなどを行い、代わりに衣食住を
助けてもらっていた……

……そんな風にほぼ家族のように暮らしていた
俺らが、ねぇちゃんと先生が結婚することで、
本当の家族になる……
あんな暴力的なねぇちゃんだけど、
俺のたった一人の肉親には違いないから、
先生との結婚は嬉しいし、やっぱり式は、
うんと良いものにしたい……
その為にはやっぱりお金が必要……

…ということで、最近はさっきみたいにちょっと
色仕掛け的なものをして、少しでもお金を
稼いでいる…
これも、本当はギリギリのラインかな……
逆上とかされないように、一応客を見ながら
対応しているつもり……でも、やりすぎて
人さらいにでも目をつけられたら
たまったもんじゃない……
「……わかったよ……あまり…
やりすぎないようにするから……」
そういうと、先生は頭を撫でてくれた…



その時遠くの方でざわざわと騒ぎ出す声が
聞こえた…
でも、遠すぎて何を言っているかは聞こえない…
かといってここからじゃ、よく見えない…
なんなんだろう…と不安になりながら
その方向を見つめていると、うわっ~と歓声が
聞こえ、それは次々と俺達がいる方へと
伝わってきた

「強盗団を捕まえたらしいぞっ!」
「また、あの警備兵か?」
「すごいなっ!青の警備兵っ!!」

そこかしこで、伝言ゲームのように
広がっていく会話……
「…青の警備兵がいたのか……凄いな……」
先生も、周りの会話を聞いて反応する……
「……先生……青の警備兵…好きなの…?」
と聞くと
「好きも好きっ!大好きだよっ!
あの青の警備兵のおかけでこの街は
暮らしやすくなったんだよっ!」
って興奮しながらしゃべるから…
めちゃくちゃ好きなんだということが伝わる   
きっと感謝をしてるということも…
「…国王が替わってからだっけ……?
青の警備兵が色々と取り締まるようになったの…」
「そうっ!今まで街中にいた素行良くない奴らを
一網打尽にしてさ……
勿論ゼロとまではいかないけど…
それでもさっきみたいに強盗とかが起これば
颯爽と現れて片付けてくれる…
ホントに凄いよ!青の警備兵も、それを作った
国王様も……」
……それから先生は…国王が変わってから、
いかに生活しやすくなったかを力説してるけど……

「……でも国王って良い噂だけじゃなくて、
悪い噂もあるよね……」
先生が興奮して話している所に水を差してしまう
ようで悪いけど……
「…自分のハーレムで、一晩共にした女性とは
二度と寝ないんでしょ?噂では朝になる前に
首をはねられているらしいよ……」
少し前から密かに流れていた黒い噂……

「……それは…まーちゃんの親友の事を
言っているのかい?」
先生が静かに聞く…

まーちゃんの親友……
えみちゃんは、まーちゃんの幼馴染みだった
勿論、俺も小さな頃から一緒になって遊んでいた
年上の女の子二人と、年下の男一人の俺…
パシりだった気がしないでもないが、それでも
いつも三人一緒に仲良く遊んでいたんだ…


少し前、そんなえみちゃんの結婚が決まった。
許嫁のその旦那さんと新しい人生を……と
希望に満ちていた時だった…
……えみちゃんのハーレム入りが決まったんだ…

えみちゃんは元々、下働きとして王宮に
出入りしていた
普通なら、そんな下働きと国王に接点はない…

ただ……稀に……例外的に……
下働きでも容姿が良いと、周りの家来達から
ハーレムに入るよう言われることもあるらしい……

えみちゃんは…
ここら辺では一番の美人で有名だった……

「国王のハーレムなんて…それこそ沢山の美人が
揃ってたり、貴族の娘とかがいたりするんでしょ?
なにも、結婚が決まっていた庶民をワザワザ
入れなくてもいいじゃん………」
そうだよ……そんなにハーレムに女を揃えて…
どんだけ性 欲強いんだよ……

……あぁ…あれか…どれだけハーレムに女がいるかで、
権力も誇示しようってヤツ……?
フンッ……ホント…くだらない……

それに一番気に入らないのは、ハーレムに入って
3日後、両親の元にえみちゃんが死んだと
遺品を持って家来が知らせに来たことだ……
えみちゃんは、若いし健康的だったから
突然死んでしまう理由がない…
両親はえみちゃんの最期の姿をみることなく、
ただ家来が持って来た遺品を形見として、
亡くなった事を納得しなければならなかった……


どんなに理不尽だろうが、国王に楯突くなんて
許されないからだ……
その後の両親の落ち込み様は凄かった…
母親なんて寝込んでしまい、
とても見ていられなかった…


そしてその話を聞き付けた人達は
みんな影で噂していた…

『国王のハーレムに入り、一夜の相手に
もし選ばれてしまったら……その子は
二度と朝日を見ることはないだろう……
朝日を見る前に、その子の首は
身体を離れているからだ……』


そんな噂がある国王…

どんなに治安が良くなっても…
他の誰かがあの人は良い国王だ…と言っても……



俺には、その黒い噂の方が全てだ……