千夜一夜物語 1 | 静かな夜に

千夜一夜物語 1

素人が書いた妄想小説です

嵐のにのあい  非リアル設定です

BLチョロッとだけ




ここは……
昼間は暑くて、夜は冷える
周りを砂漠に囲まれた大きな街
様々な人種の人達がここに訪れ、
その街の美しさ、大きさ、活気の良さに驚く………

その街の一角…
市場のすみに野菜と果物を売っている店がある


「よぉ、ねぇちゃん、この果物いくらだい?」
今日も鼻の下を伸ばしながら声をかけてくる客を
心の中で舌を出し、顔は満面の笑みを
浮かべながら相手をする
「最近、野菜も果物も高くなってね……お兄さんが…
お代にすこ~し気持ち乗せてくれたら
嬉しいんだけどな…」と微笑んで見せれば、
直ぐ様財布を取り出し、
このくらいでいいか?と多めにお金を払ってくれる…
そのお金を受け取りながら、にっこり微笑み
手の一つでも握ってやれば、途端にその客は
赤くなる
「…また、明日も買いに来て欲しいな……」
トドメの一言を付け加えて、手を振れば
あたふたと、じゃあ明日も来るよっ!!
なんて締まりのない顔しながら帰っていく……

そんな客の背中を見ながら
「……まいどありぃ……」と呟く…
おっさん相手だと、ほんとチョロいわ…
……まったく、なんでこんなに上手くいくかね…
鼻で笑いそうになった時、ボコンと頭に
鈍い痛みがはしった……
「……っ痛ってぇなっ!!ねぇちゃんっ!!」
振り向くとそこには、とうもろこしを持ちながら
仁王立ちしているねぇちゃんの姿があった……
もしかして、今殴ったの そのとうもろこしかよ…
信じらんねぇな……
「痛てぇじゃないわよっ!またあんな売り方
してっ!!ホントに女だと思われて
拐われたらどうすんの?!」
「大丈夫だよ……危なくなったら直ぐに
ストール取って男だっていうから……」
と、言っているのに
カズは自分の事をわかっていないだの、
もっと己を知れだの…なんだってのよ……

己のことなんか、自分がよく知ってるよ……
昔から中性的な顔立ち…こんな砂漠地帯に
住んでいるのに、肌は焼けずに赤くなるだけ…
おまけに筋肉もない……
ちょっと女性用のストールで身を包めば
さっきみたいに俺を女だと勘違いした奴らが
鼻の下伸ばして多めに金を払ってくれる…
……まぁ、俺も自分の見た目を利用してるって
ことなんだけどさ……
だって、金はいくらでもあった方がいいじゃん……

それでなくても、来月……

「……あっ…先生…」
「またその手には乗らないわよっ!!
あの人は今授業中なんだからっ!」
そう言いながら、
まだ俺にお説教を始めようとした時
「…またカズくんと姉弟喧嘩…?仲いいね…」
と後ろからの声にねぇちゃんの動きが止まった

「…えっ?どうして?今授業中……」
「…あんまり天気が良いからね……子供達が
外で遊びたがっちゃって……今日は少しだけ
早く終わらせてあげたんだ……」
……そうなんだ……って途端にしおらしくなった
コイツは…ホントに誰だよっ!
いまだに先生の前だと、そんな乙女になんのかよ……

「……ねぇ先生…結婚…ホントに
ねぇちゃんとでいいの?
この人…俺の事とうもろこしで殴るんだよ…?」
「ちょっと、カズっ!!」
ちょっとした反撃でそんな事を言ってみると
慌てて、持っていたとうもろこしを商品の山に
戻したねぇちゃんに笑いそうになった……
「…まーちゃんは、カズくんの事を本当に
心配してるんだよ……」
なんて昔と変わらない優しい声で言うから……
あぁ、あぁ…またねぇちゃんが赤くなっちゃって…
ほんと…見てらんないよ……

大体初めて先生と会ってからもう10年以上経つのに
いまだにその初々しい態度…なんなの?
こんなんで、来月結婚して、
結婚生活なんて出来んの?

先生にこっそりと
「……先生も、物好きだよね…
大体最初に会った時なんて俺ら子供よ…?
今さら、ねぇちゃんを女として見れるの?」
と聞いてみると
「……生徒に手を出したなんて言われると
困っちゃうんだけどな……
でも最初から、まーちゃんは可愛かったよ…」
そう言いながら先生は、元から細い目を
更に細くして、ねぇちゃんに向かって微笑んだ……
ねぇちゃんも、それを見て赤くなりながら微笑む

はいはい……わかりましたよ…
二人が熱すぎて、からかう気も起こりません……


「……でもカズくん……本当に気をつけてよ?
昔と違ってだいぶ暮らしやすくなったとはいえ、
いまだに人さらいとか、強盗とかは
いるんだからね?」
「わかってるよ……」

そう言いながら、ふと昔の事を思い出していた……