sugar rush 15 | 静かな夜に

sugar rush 15

素人が書いた妄想小説です

嵐のにのあい  非リアル設定です

BLチョロッとだけ





心臓がバクバクして、その場から走り去ろうとした
相葉さんに見つからないように……
……だって今、俺…どんな顔してるのか
自分でもわかんない…
なのに……

またしてもあの人は、大きな声で
俺を呼ぶんだもん
無邪気にさ…
あのコーヒーショップの前で
ニノって大声出した時のように……

無理無理無理…
今、目の前に貴方が来たら、それこそ
どうリアクションしていいかわかんない……
俺は…貴方の呼び掛ける声に気づいていません……
そう装おって、その場から逃げた…


その後、午前の治療中…
ふと思い出してしまうのは、
あのキャッチボールをしている風景……
ため息をつきそうになっては、ダメダメ今は治療中
プロの仕事をしろと自分に言い聞かす…
仕事が出来なくなるなんてプロ失格…

……いつもよりも集中したら余計に疲れた……

しかしもう、今は予約者の治療は終わり
あと30分で診療時間も終るというところ…
山田さんが、診察室に入ってきた

「二宮先生…急患なんですけど……
男の子が歯が痛いって……」
…それは可哀想だ…
直ぐに診察室へ入るように山田さんに伝えると
「なんか…あの相葉さんのお子さんみたいですよ
凄い仲良い感じで……」
と、山田さんは最近近所で会うようになったと
相葉さんの話をしていたから、その流れで
プラスαの情報を教えてきた…
……相葉さんって…あの相葉さん…?
子どもって、さっきまで公園で楽しそうに
キャッチボールしてたあの子ども……?
山田さんには悪いけど、今その情報…
一番俺が聞きたくなかったやつだな……

でも、既に山田さんは診察室の扉を開けて
中に呼び込んでるし……
……でさ……その男の子は明らかにひきつった
表情してる…
その内そんな状況をみかねた山田さんが
診察台の近くに相葉さんが座る用の椅子を
持ってくるしさ……
まぁ…歯医者が怖い子どもには親が近くにいたら
少しは気が紛れるだろうといつもやってる
配慮なんだけど……
今日、この時ばかりはそこに座った相葉さんを
見られないというか……

「…相葉…ゆうきくん…だね…。
どこが痛いのか見せてくれる?」

山田さんが新しく作ったカルテには
『相葉ゆうき』と書いてある……
そんな些細な事でも、俺に現実を突きつけてくる

でも……この子は患者…
しかも歯医者に来て怖がりながら
治療を受ける子どもだ…
そこはきちんと私情を挟まず治療してあげないと…


でも治療しながら、感じる相葉さんからの視線…
そんなに気にしなくても、治療はきっちりやるよ
ちゃんとプロの仕事を……

でもさ……
この期に及んで、
子どもがいても奥さんがいなかったら…とか
思っちゃう俺はなんなんだよ…
奥さんがいなかったら何?
このモヤモヤが少しでも晴れんのかな…
でも、次の言葉に小さな小さな望みは砕かれた

「…俺が歯医者に行くのビビってたって…
ママに言わないでね…」
と目の前の子が恥ずかしそうに呟くと
相葉さんは
「わかった、ママには内緒ね…」
と答えたんだ……

もう、その瞬間頭の中には幸せそうな家族像が
浮かんじゃってさ……

なんだか、裏切られた気分…

……って何を裏切られたんだろうね…
まだ何も始まってすらいないのに…


……いや……

始まりそうになってたのは俺だけだった…

最初は変わった人だと思った…
それが強引な人に変わっていったけど…
不思議とその強引さが嫌じゃなかったんだよ…
平日の朝…コーヒーショップで逢うために
少し早起きしてさ…それを毎日続けて…
あの人と少しでも話が出来るように
席まで確保して……

そんな毎日が楽しいと思っているなら
それはもう……

今さら…気づいた所で
この先に進むことはないけど……


……っていうか、相葉さんの思わせ振りな態度も
どうかと思いますけどっ!
家族がいるくせに…

オジサンが呼んでるから自分もニノって
呼びたいとかさ……
毎日あのコーヒーショップにくるとかさ……
俺の事……かっ可愛いなんて言ったりさ…

そうだよ……
全部思わせ振りな態度を取った相葉さんが悪いっ!




そう結論付けた俺は、
診察室から出ていく相葉さんに
おもいっきり拒否の瞳を向けた