あの場所で
最後に彼女は
何を思ったか
『人生を彩る教養が身につく 旅する世界史』
著:佐藤 幸夫
昔、フランスに一ヶ月滞在した。
目的は特に無く。色々疲れたので人生一度きりだと思い旅立った。29歳の頃。
アパートを借りて毎日ワイン飲んで二週間語学学校行って観光してミュージアムパスで美術館通って。
もちろんベルサイユ宮殿も行った。
この本の45Pに掲載されている皆さんご存知の場所。
だけど、私の心の奥深くに爪痕のように残ったのは煌びやかな宮殿でも目移りするほど沢山の美術品に囲まれた場所でもなかった。
コンシェルジュリー
そこは牢獄だった場所。
その場所からコンコルド広場へ行き、多くの者が断頭台の露と消えた「死の牢獄」
ベルサイユ宮殿は電車に揺られ辿り着くが、コンシェルジュリーは歩けばすぐ。ルーブルやノートルダム大聖堂のすぐ。
近いな。街と。
ちょっと近すぎるだろう、牢獄なのに。
電車使わないと行けないベルサイユ宮殿で民の声が届くとは思えないが、コンシェルジュリーは街のど真ん中であらゆる音が聞こえ囚人たちは民の熱気や歓声、叫びを牢獄で受け止めていたはずだ。
政治犯のための牢獄
自分が願った政治、生まれながらの立場で受け止めるしかなかった政治、そのどちらも時代が味方をするかしないか。
コンコルド広場まであっという間。
きっと、あれよあれよで露。
旅をすると距離を知る、その遺跡の空気を感じる、場所を取り囲む音が聞こえる。
マリー・アントワネットと同じ風景を見る。
彼女に思いを馳せ、その牢獄を私は出た。