あ、包丁怖がってる。
 
この本を読んだ後、キッチンに立つ自分の姿を見て気が付いた。へっぴり腰、及び腰、体全体が引いてる。確かに18歳から一人暮らしで料理は気が向いた時にやる程度だったけど今だに色々怖い。切れ味鋭い包丁で指を切ったら、油がはねて火傷したら、取っ手の取れるフライパンで急に取っ手が取れたら、圧力鍋が爆発したら、ってこれでは身動きがとれないが怖いものは怖い。なんとなく恐る恐るやっている。
 
美味しいモノを作ることが出来ない、これも料理に恐怖心がある理由の一つだ。

 

調味料を入れて作ったのに完成したら無味になる。お菓子を作ろうと思うと砂糖の量に怖気づく。丁度いい塩分量が分からない。レシピ通りに作っても正解の味なのか不安になる。自分ひとりの「美味しい」を見つけるのは出来るが他者の「美味しい」とすり合わせるのは難しい。

 

いつの日かロボットがお家の料理をするようになったら料理の悩みから私は解放され、いつの日かロボットがすべての料理をするようになったら飲食店は消えていく。

 

外食に費やす時間とお金は手元に残り、夕飯の準備で頭を悩ますこともない。人生の効率化が大好きな人々にとっては喜ばしいことだろう。でも何か腑に落ちないのは、体調と舌と思い出と他者の気持ちの先にある「美味しい」を探すのを手放してはいけない気がするからだろう。

 

だから砥石を買う。そこから始めようと思ってる。