と、昔バイト先の友達が言っていた。その頃はもっと他に欲望は無いのかと思ったが、結果その通りだったなとこの歳になってみてわかる。食欲と睡眠欲は他人が干渉しないので自分一人で満足度を上げることが出来る、だから着飾って評価を待つよりもリターンは大きい。

 

「正義」は信用ならない。時と立場によりコロコロ変わるから。

「正しい」は恐ろしい。この言葉を背にした人は自らを絶対だと勘違いするから。

 

だから世の中で唯一の「正義」は「美味しい」でいいと思う。

そして唯一の「正しい」は「美味しくて幸せな顔」でいいと思う。

 

NYの「食べる」を支える人々の経歴は様々で、生まれた場所が食の現場だったから跡を継いだ人もいれば華麗なジョブチェンジをした人もいる。彼らの努力は歯を食いしばるという表現がピッタリな程で忍耐のバロメーターが振り切っている。彼らが貫いてこれたのは美味しいものを食べることの喜びを伝えたいというシンプルな考えが根底にあったからだろう。

 

身近な人々が食に対して諦めを感じている。年齢によるものだが、何もできない自分が歯がゆくて苦しい。きっと世界中の「食べる」を支える人々も様々な理由で歯がゆい思いをしているのだろう。

 

この本に書かれているストーリーは続いている。今、どれだけの人が「食べる」を支えているのかわからない。

 

でも「美味しい」を知っている彼らは、きっとどこかで美味しくて幸せな顔を今日も微笑みながら見ていることだろう。