そう言われると難しいが、特に意識せずとも勝手に心と体は東京のおばさんになった。おばさんと呼ばれるのが嫌な人もいるだろうが、お姉さんと呼ばれ続けある日突然おばあちゃんと呼ばれた時の心のダメージを考えたら早めに受け入れた方が良いと思っている。というより、おばさんに負のイメージを勝手につけないでくれ。なってみてわかるんだ。おばさん最高、何この開放感。
 
まず若い頃に感じていた視線と放っていた目線が消えていく。結局自分は素晴らしい皆様の背景だったと気付く。何かしらの線が引かれ、その線の外側にいる自分に寂しさも感じるが内側にいる気力はすでに無い。淡い狩りの時間が終わりを迎えたのだと深く頷く。
 
こうなると大半の事はどうでもよくなる。やったね。全集中自分。コツコツ積み上げてきた社会性を隠れ蓑にしてスパーン!スパーン!と面倒な事斬っていく。太刀筋最高。前世は武士かな。応えられない他者からの感情は桃に詰めてどんぶらこ。自分の容量に空きを。空いた分には悩みより楽しみを。悩んだって仕方ない、もうここまで生きてきちゃったもん。
 
そんな背中を見せたいと思っている。見せなきゃいけないと思ってる。見せたかった人がいる。
 
気楽に振る舞う笑顔の下に、後悔の川がゆっくりと流れている。