2016・02・09


お送りしたのは、モハメッドアブドラなんとかさんの、ラ・タクジビでした、とラジオが言った。

あとで、ユーチューブで調べてみよう。心をわしっとつかまれた。いい曲だった。

世界のどこかで知らない人が、命を育んでいる、そんな風に感じさせるものがあった。

日の出前に星の光を頼りに、女子供たちが井戸の水を汲みにいく、そんな情景が目の裏に浮かぶような、そんな曲だった。一曲が10分近くと長いのも良かった。

十分に心が遊覧飛行する時間があった。


今日って、スーパーボールの日なんだって。そっか、アメリカ中は大盛り上がりなんだろうな。

今年ったら、大統領選もあるからな。8年前のあのワクワクした気持ちを思い出した。

初めてアメリカ大統領選挙で黒人大統領が選ばれた日。CHANGE。世界が変わるって思った。

高揚感。今年はブルーノマーズとコールドプレイとビヨンセが一緒にperformanceするんだってね。

なんて豪華なんだ。8年前だって既に素晴らしいかった彼らだけど、今年だって相変わらず素晴らしい。

きっと8年後だって素晴らしい。


次の曲によって心はアゼルバイジャンに連れていかれた。

アゼルバイジャンなんて行ったことないけど、南馬込に住んでいた古い友人のお父さんの赴任先がたしかアゼルバイジャンだったっけ。中学生の私にはよくわからなかったけど、アゼルバイジャンに赴任するような仕事をするお父さんの娘さんが、私の中学校の親友だったんだなぁ。へぇ。どこにあるとも知らないアゼルバイジャンから、中学生の一人娘をどんな気持ちで想っていたんだろうなぁ。


心が遊覧飛行している。

こういうときは、事故に気を付けなくっちゃいけない。

サイドミラー、よし。バックミラー、よし。


いま、ユリちゃんに会いに行く。

眠っているんだろうか。眠剤は、どのくらい投与されて、どんな検査をしたんだろうか。点滴の液体は漏れなかっただろうか。痛い思いをしただろうか。


私の心が世界中を駆け巡っているよ。

ユリちゃんのこと、応援してくれる人、世界中にいるよ。でもまだ世界のお友達に言っていない。

ユリちゃんのこと、これから言うよ。


この民族音楽に合わせて、一緒にユリちゃんと踊りたい。さぁ、踊りに行こうよ。

17歳になれるだろうか。思春期になって、私を困らせるだろうか。


どうしてあなたの人生だけ短いかもしれないんだろうね。ねぇ!

こんなことがあって、いいんだろうか。ねぇ!

ユリちゃん、いま、会いに行くよ。


あの日、ユリは搬送されたね。

どうして私だけユリちゃんのそばにいられないの。

三カ月の誕生日に、二回目の骨髄液をとられるユリちゃん。


遊覧飛行が終わって、歌謡曲が流れてきた。