話は戻り、
の続きです。
入学当初はコウを入れて5人だった
1-Aは、
途中で転校生が2人、
通常級から移ってきた子が1人追加になり、
全部で8人になりました。
その中で、私立中から転校してきた
男の子がいるのですが、
コウは彼が転校してきて早々に
『オレ、コウ!よろしくな』
と自分から話しかけたそうです。
伊藤先生からそれを聞いた私は、
思わず『え?コウがですか?!』
と疑ってしまったほど。
自分の世界にこもり、
(これは今でも変わりませんが)
他人に興味が無かったコウが
転校生に話しかけるなんて
去年の秋に行われた面談では、
伊藤先生はこんなことを言っていました。
『コウのクロームブックのトップ画面は見たことはありますか?』
小5のときに学校から配られた
クロームブック。
自治体によってはiPadだったり
するみたいですね
コウはそのトップの壁紙を、
学校で撮ったのか変顔で思いきり笑った
自分のどアップの写真を設定しています。
『転校してきた当初、彼はほとんど笑わないし自分からは喋らなかったんです』
『そしたらコウが、“ねぇねぇ、見て見て”って、閉じてた自分のクロームブックを彼の顔の前でばーんっと開いて』
『あのコウの変顔の写真見て、彼はもう大爆笑ですよ』
私立中に一旦は入学するも、
数ヶ月で(しかも学区じゃない)
この学校に転校してきたということは、
詳しくは聞きませんでしたが
よほどのことがあったのだと思います。
当然コウはそんな事情は知りません。
でも、笑ってほしいという思い1つで
行動したんでしょうね。
中学生の自覚が出てきたと思う、
という伊藤先生はさらに。
『もう一人の転校生の子も、前で一人で発言するというのが苦手な子でして』
『立ったまま言葉の出ない彼にコウは、“落ち着いて!”“深呼吸!”と叫びました』
『その子の発表が終わると“いぇーい!!”と、自分のことのように喜んでましたよ』
すごい…コウがそんな事を?
『自分ができない事はさておき、周りの事を一緒になって解決しようとするところがあります』
自分ができない事をさておきにしちゃうのが
難点ですけどね、と言って
伊藤先生は笑いました。
勉学の進み具合はそこそこ…
本当にそこそこですが、
精神的な成長はかなりしたようです。
コウが置かれているこの環境について、
私は本当に安心していました。
…続きます。