の続きです。
プールの授業でシュウが溺れた事実を
知らなかったという教頭先生。
まずいと思った杉田先生は、
またお決まりのあのセリフを発しました。
『溺れたっていうか、ちょっとズボッといっただけで…』
するとあろうことか、教頭先生まで。
『あ、そうなの?…じゃ、行き違いがあったという事でしょうかね…?』
呆気にとられて、
一瞬言葉が出なくなりそうでした。
…危ない危ない、
ここで黙ってたら主導権を握られる。
『シュウは“プールの水を飲んだ、鼻にも入った”と言ってました
これは“溺れてない”んですか?』
『そもそも、プールって命の授業だと思うんですが、大げさすぎますか?』
そして、ここまでは言いたくなかったけど
あまりに2人に呆れたので言いました。
『子供が死にでもしないと何事にはならないんですか?』
私が死というフレーズを口にしたせいで、
空気が凍り付きました。
それでも構わず、
私は冷静に続けます。
『いろんな人から言われました。
“シュウくん溺れたんだって?!”
“大丈夫だった?”
“学校から何も連絡来ないよね”
もう保護者のみんなはみんな知ってます』
『夏休み明けに、全保護者、無理なら学年だよりで1年生の保護者にだけでも報告してください』
今更謝罪してほしいわけじゃない。
ただ、無かったことにしてほしくないだけ。
給食にビニール片が混入したら
すぐ連絡網で連絡が来るのに、
シュウが溺れたのはそれ以下の出来事なのか?
確かそんな事も言った気がします。
言いたいことはプールの事だけじゃないので、
とりあえずこれくらいにして、
『そして2つ目、よろしいですか?』
と話を変えました。
『私は杉田先生から、4月のわりと早い段階で支援級を勧められました。
でもうちは入学前に教育センターで就学先は通常級でという判定を受けてます。
これは、学校側としては教育センターの決定が間違ってるというご意見と考えてよろしいんでしょうか?』
杉田先生は焦った顔で
『えーっと…』と言ったきり。
教頭先生は何も言いませんでした。
しばらく沈黙が流れたので、
私はもう一度言葉を変えて話しました。
『通常級判定ということは、私達にはここしか行く場所が無くて通ってるんです。
選ぶ余地がないから、この学校のこのクラスにいるんです。
なのに明確な説明がないまま、支援級を勧めるのはなぜですか?』
2人とも下を向いて黙るので、
さらに私は畳みかけました。
『確かに今のシュウは気分にムラがあるので、扱いにくいと思います。
こないだまで幼稚園児だった子たちを一人で見るのは、さぞ大変だと思います』
『でもそんなことで支援級…って、違うんじゃないですか?』
『支援級は単に通常級で扱いにくい子を行かせるところじゃないですよね?』
しばらく黙っていた2人。
ですが急に思い出したように、
杉田先生は机の上に置いていた
ドリルに手を伸ばし、
『で、でも!』
と反論を始めました。
…続きます。