店内はレジから3段くらい
階段を上ったところに客席があり、
どうやらコウは母が席を立つと自分も立ち、
階段の段差を踏み外して
テーブルの角に耳をぶつけたようです。
ちなみに、傷痕は残ってしまいました。
今もコウの右耳は
“ここから手で切れます”の袋みたいに
少し裂け目があるのと、
ミミズのような痕があります。
すべての責任は、私にあります。
やはり母なんかに
任せて離れるんじゃなかった。
私がコウを連れてレジに並べば良かった。
でも腹が立ったのは
戻ってきた母の第一声。
『男の子だからいいじゃない。
多少の傷なんて』
やっぱり無理だ、と思いました。
小さい頃から母とは折り合いが悪かったけど
大人になれば変わるかな、
と少しでも思っていた自分を
バカだと思いました。
一緒に暮らすのも、
ましてや入院中にコウを預けるのも、
絶対に無理。
私は家に帰ってから、
母に伝えました。
母は当然ヒステリックに怒りまくりましたが、
私はあくまでも冷静に、
淡々と“縁を切りたい”と伝えました。
『あんたの事なんか、昔からかわいいと思わなかったわ!』
『ガイジなんか産みやがって!』
『男の孫だって望んでなかったのに、ガイジなんて!』
『私が大事なのはしーちゃん(姪)だけ!
あんたもガイジもかわいくないわ!』
『せいぜいお腹の子はガイジじゃなきゃいいけどね!
男の子ならどうだか!!』
悔しかったです。
なんでここまで言われなきゃいけないのか。
でも、キレてる人にキレ返したところで
何も進みません。
『言いたいこと、それで十分?
じゃあ、早く出てってください』
終始冷静に、母を追い出しました。
これから一人でどうしよう。
考えなきゃいけないことは
いっぱいあったのですが、
心の中はとてもすっきりでした。