皆が帰ったあと
棺は控え室の中に
旦那の顔がいつでも見れる様に
顔の扉は開けっ放しにしていた
一緒に眠れるのは
今日で最後なんだ…
もうこの顔を見れなくるんだ…
何度も何度も穴が空くほど見つめた
一晩明け
12:30からお葬式
父は早くから会場に来てくれた
父に珈琲を入れる
喪主の挨拶の下書きを
不安で父に見てもらう
父は泣いていた
私は今回の旦那の事で
初めて父の涙を見た
旦那の高知時代の友人が来てくれた
去年、久しぶりに連絡を取り合えば
まさかの時を同じくしての
お互いの癌闘病を知った
病状も似ているところもあり
励まし合いながら
これまで共に治療に励んできた
自身も治療中で体が辛いのに
こんな遠くまで
旦那に会いに来てくれた
昔からのバイク仲間
預かってきてくれたお香典には
懐かしい名前がずらり
もう高知を離れて20年にもなるのに
久しぶりの懐かしい顔に
お互いに涙が溢れた
旦那は逝ってしまったけれど
友人はきっと癌に打ち勝ってくれる
そう信じたい
友人は涙しながら
「頑張るから!」
そう言ってくれた
お坊様のお経が終り
棺内の旦那の周りにお花を並べる
頭から足元までぎっしりと
お花で囲んであげることができた
「この後はもう
触れたり出来なくなります
ご家族様しっかりお声をかけてあげてくださいね」
長男、次男、私で
旦那の顔の周りを囲んだ
旦那の頬に触れながら
「ありがとう
本当にありがとう
3人で頑張っていくから
安心してね」
旦那の顔に
私の涙が何度も落ちて
それを指で拭った
長男も次男も
父の顔に触れ最後のお別れをした
父の顔を見つめる長男の目から
ポロポロと涙が落ちて
棺の中に落ちた
棺の蓋が閉じられた
リムジンで
火葬場へと向かった