皆さんは”幹線”と聞いたら何を連想するだろうか。
新幹線?幹線道路?
…今回紹介する”幹線”は……
送電線界の幹線である。
そもそも、送電線にはそれぞれ路線名があり、主に送電先の地名などが路線名が使用されるのだが、中にはその地名に加えて幹線を冠する路線が存在する。
幹線を冠する送電線は大きく2種類に分けられる。
・水力発電所を電力源とし、低電圧、超長距離のもの
(電源開発佐久間東幹線(佐久間発電所→西東京変電所)など)
・原子力発電所を電力源とし、高電圧、中距離のもの
(南新潟幹線(柏崎刈羽原発→西群馬開閉所)など)
今回の”幹線”は後者に当てはまる。
…後者には一応当てはまるが、それと同時に大間幹線は送電線界では珍しい未成線でもあった。
プロフィールを紹介しよう。
大間幹線は、電源開発によって平成18年5月に着工した亘長61.2キロの送電線。
電圧は500kV、129基の鉄塔で構成されている。
この送電線は、電源開発大間原発と東北電力むつ幹線を結んでいる。
これは電源開発がホームページで公開している大まかな大間幹線のルートを示した図。
…先程記した未成線とはどういう事なのか。この図にはその答えが載っている。。
が、未成であることを明記している資料があるので、そちらを引用する。
こちらも電源開発が公開している資料、タイトルは「大間原子力発電所の状況について」。
この資料の2ページ目には発電所と接続する大間幹線の概要が記載されている。
発電所の営業運転開始日と、大間幹線の供用開始の欄を見ていただきたい。
そこには…
未定
と、堂々と書かれているではないか。
この大間幹線の建設目的は、大間原発の電気を送電すること。しかしその発電所は未完成なのだ!
同じ資料を読んでいくとこんなページがあった。
この発電所は平成20年に着工し建設中に東日本大震災が起きた。
当然、工事は休止された。
そして入念に設計や計画の変更し、計画を再開したものの、地域からの原発反対の声があり運転開始には程遠い状態なのだ。
当然、建設計画には大間幹線の建設も含まれており、着工も発電所本体より2年ほど早かった為運転開始できるかわからない状態の中完成してしまい今は1ボルトも電気の流れていない、ただのでっかい塔となってしまった。。。
ということなのである。
正しく文字通りの未成線なのだ。…見た目では全く判別つかないが…
中の人が偶然出会った大間幹線の鉄塔たち。
当然、この当時は電気が流れていると思っていた。
余談だが、大間幹線は同じく500kVのむつ幹線に終端部で接続している。
500kV送電線同士が変電所や開閉所を介さずに接続しているのはかなり珍しく、その姿を見てみたい!と画像を探してみたが見つからなかった。
どうやら接続部が東通原発敷地内で、一般人は見れない状態にあるようだ。。
残念…
1番惜しかった画像はこれ。
画像のすぐ左でむつ幹線と大間幹線が合流しているはずなのだが…微妙に映っていない。惜しすぎる。。
この資料は東通原発の紹介ビデオから引用。
むつ幹線は東通原発からの送電線で、大間幹線との接続に際し送電電圧を275kVから500kVに昇圧している。
新入りに電圧を合わせてあげたのに、新入りが十数年電気を送ってこないだなんて…
ある意味むつ幹線も”未成線”なのかもしれない。。
そんな世にも珍しい送電線界の未成線レポートでした。
さらにさらに余談だが、送電線界で未成線が珍しいのは
・民間の電力会社の所有物なので、行政より入念に計画を立てている
・必要に迫られてから建設するケースが多い
・計画が頓挫すると会社の信用に影響する
など、いくつか要因があるようだ。
またパッと見未成線っぽい送電線でも役割があって未成ではないというケースもある。
横浜市鶴見区にある
寺尾線21号(左)と北の台連絡線20-1号(右)
左の寺尾線は左右に電線が伸びているが、
の北の台連絡線は写真左方に電線が伸びていないのだ。
電線が伸びていないということは送電先がない。すなわち、北の台連絡線には、、大間幹線同様電気が流れていない。
しかしこれは未成線ではない。廃線でもない。
送電線には〇〇幹線と名乗る線があるように、〇〇連絡線と名乗る路線がある。
連絡線には、有事(今回の場合現役線である寺尾線鉄塔の不具合や建て替えなど)の際に使用不可となった送電路の代替をする役割が与えられている。
つまり、この北の台連絡線は電気は流れていないものの未成でも廃線でもなく”計画通り”電気が流れていないのだ。
連絡線そのものがレアなので、もしみつけたら「イヒヒ…電気通ってないんでしょ僕知ってるよ…」
と思ってあげてください。。
長い長い自分語りに付き合ってくれた皆さま、本当にありがとうですよ。