談志と私11 | 小林茂子オフィシャルブログ「生きてみよ、ツマラナイと思うけど」Powered by Ameba

談志と私11

偶然談志のマンションの前に人影が見えた。

こちらは、会えなくてもともと

私達の業界では、目上の人にアポイントメントを取ることはない。

行っていなかったらそれまで

三木男は黒紋付き、私は普段着

タクシーから降りる私達をじっと見ている。

三木男が「談志師匠だ!!」と騒いだ。

近寄ると談志で暇だから散歩に行こうとしていたと言う。

後30秒遅かったら、三木男の運命はちょっと変わっていた。

談志は「お前ら、時間あるのか?」

(あるから来たんだよ!!)と言う心の声を押し隠し「はい」とだけ

談志の書斎で先ずは乾杯

よもやま話

三木男は、えらくデカイ座布団に座らされなんか姿勢を保つのもやっと

紋付きを汚さないように談志はタオルを掛けたり立ち働く

しばらく話していて喫煙者の私はタバコを吸いに換気扇の下へ

談志は咽頭癌でタバコをやめた。

換気扇の下で私は「師匠に呼ばれ三木男の独演会やらなきゃいけないのよ!!ゲスト呼んで」

私は三木男が入門の条件として落語協会をうろうろしないと約束した。

だから立川流をうろうろしていた。

ゲスト候補をタバコを吸いながら一生懸命考えていた。

すると私の背中越しに「俺じゃあダメ?」と談志が言っている。

私は邪険に「何が?」と言いながらタバコを吸う。

「だからゲスト…俺は落語家だし、集客力もあるんだけど」

と、セールスを始めた。

「だって最近落語出来ないでしょう!!」

「うん、だけど三木男の為なら一生懸命やる。」

「えーっ!?じゃあ三木男が良いって言ったらね」

傍らに座る三木男は座布団から降り「宜しくお願いします」と頭を下げている。

私は「遅れて来ない?」

「早めに行く。」

「だったら頼んじゃおかなぁ」

すると談志は「いっそ、三木男、談志二人会っていうのはどうだ!?」

「ダメ!!独演会っていう条件だから」

「だったら、俺がずっとゲスト…そうしたらお前も楽だろう!」

こうして密室の談合は成立した。

しかし、そう上手くいかない。

翌日立川流から「他流門のしかも二つ目成り立ての落語会にずっとゲストと言うのは…談志はやりたがっているが立川流としては弟子に示しがつかない!一回だけ」と言われた。

まぁ1回だけでも独演会のゲストが決まれば良い!!と私は思った。