談志と私6 | 小林茂子オフィシャルブログ「生きてみよ、ツマラナイと思うけど」Powered by Ameba

談志と私6

談志は忙しかった。

講演の日も掛け持ちで、お嬢さんがピタリと付き私は静かにしていた。

そして時が流れ、息子が落語家となった。

日刊スポーツの主催する落語会に息子は駆け出しの前座として入った。

その日のトリは談志

慣れない前座修行に息子はあたふたしていたらしい。

そして談志楽屋入り

すると、出演者の談春師匠と花緑師匠が談志に向かい、傍らで仕事している息子を「師匠、これ茂子姉さんの息子です!!」

談志は立ちかけた状態で「何ぃ、お前茂子の子か!?」

息子は慌てて「はい茂子の子です」

息子は談志と私の関係を全く知らない。

吉なのか凶なのか

「お前本当に茂子の子なんだな!!」

息子は不安を押し隠し「はい茂子の子です」

その日1日「おい茂子の子」と談志の身の回りの世話をした。

いよいよトリのお帰り

「立ちませい」お白州ならそういう感じで一同お見送り

末端前座の息子は、いち早くエレベーターのボタンを押しに

エレベーターに乗った談志に一同「お疲れ様でした。」
エレベーターが閉まる瞬間談志は押し留め「おい茂子の子、今度稽古してやるから」と去って行った。

エレベーターホールでは、出演者達が立ち尽くす。

駆け出し前座に談志の稽古
通常では考えられない。

息子も談志の稽古の有難さを知らない。

帰って来てその話を聞いて私は、みんななんとなく知っているんだ!!と思った。
息子の紹介は数々ある。

「三代目三木助師匠の孫」

「よ代目三木助師匠の甥」

しかし的確に「茂子姉さんの子」

見事に談志のハートを射止めた。