談志と私5 | 小林茂子オフィシャルブログ「生きてみよ、ツマラナイと思うけど」Powered by Ameba

談志と私5

銀座のクラブで待ち合わせするには早い時間だった。

私は早めにクラブに着くとカウンターでマスター相手にお喋りしていた。

すると階段をダッシュで下りて来る気配

私はスチールから滑り降りた。

入口を見ると談志が立っていた。

暫し目が合ったまま硬直

談志は駆け寄ると私を固く抱きしめた。

「生きていてありがとう。つらかったろう、悲しかったろう、だけど生きていてありがとう。」

ようやっと腰かけた。

「俺は肉親を失ったことがない。だから、お前の辛さはわからない。だけど、お前には俺がついている。」

1時間程喋った。

すると、お嬢さんの銀座のクラブに打ち合わせに行くという。

「じゃあ私はこれで」と立ち上がると「今日はずっと一緒にいよう。」

しかし打ち合わせについて行く程野暮じゃない。

固辞した。

しかし言うことをきく輩ではない。

居心地の悪い娘さんのクラブだった。

「茂子さんドンペリ飲んで」
せめて店の売り上げ協力で居心地の悪さを誤魔化そうとした。

談志は墓石の会社から講演を依頼されていた。

「うーん、講演じゃあ前座という訳にはいかないから茂子お前前座務めろ!!10分で15万で…」

墓石会社は談志の言うなり
あっという間に仕事をもらった。

そうそうに墓石会社との打ち合わせを終え私と談志は腕を組み銀ぶら

茂子帰るか!?でタクシーに乗る。

タクシーで談志のマンションに着くとダウンのポケットからまとめた札束を出した。

「俺は銀行のことはわからない。これが我が家にあった全ての金だ。金は持っていて困るもんじゃない。茂子、これで好きなものを買え、俺は忙しくて側にはいられないがずっとお前を心配している。」とタクシーを降りた。

まとまった金は、談志の愛がこもっていた。