談志と私2 | 小林茂子オフィシャルブログ「生きてみよ、ツマラナイと思うけど」Powered by Ameba

談志と私2

私はずっと談志と連絡しなかった。

連絡先も知らないし、談志は落語協会を脱退しているし

ある日、弟三木助から「胃癌でM外科に入院している」と聞かされた。

M外科は、三木助の掛かり付けの病院だった。

知らない顔も出来ない。

面会謝絶の状態だが行くだけ行こうというノリだった。

15年は会っていない。

見舞いを持ちM外科へ

すると婦長が出て来て「会って行きなさいな」と面会謝絶の病室へ

「師匠、茂子さんよ」

部屋の中には、銀座のクラブのマスターと談志

「おっ!!茂子」と談志

「茂子ちゃん」とマスター

15年の時は一気に氷解

マスターは、「記念に写真を」と言って1枚パチリ

すると気を利かせたように帰ってしまった。

談志はベッド

私は傍らの椅子

突然談志立ち上がり、私を立たせると固く抱きしめ「茂子、俺は生き返ったぞ!!胃癌に勝ったんだ」

抱きしめる談志の身体から胃癌の恐怖やそれまで抑えてきた様々なものを感じた。

私は固く抱きしめられた腕をようやく引き抜くと談志の背中に手を回し「良かったね!!偉かったね!!」と背中をなぜた。

運悪くさっきの婦長

「談志さん検査の…あらごめんなさい」

いえいえ別に

「検査の時間ですよ」

談志は名残惜しそうに連れて行かれた。

また会う約束などしないうちに

でもここで引き下がる談志ではなかった。