私の落語人生5 | 小林茂子オフィシャルブログ「生きてみよ、ツマラナイと思うけど」Powered by Ameba

私の落語人生5

狼達は、そこここにいた。

当然私は人妻

かき口説く相手はいる筈はなかったがしかし、押し倒す人はいた。

こっそり押し倒すならまだしも…公衆の面前で酔った勢いで押し倒された。

出入りしている若い咄家達にとり22歳のお姉さんは新鮮だったのだろう。

夫も見ている前で押し倒されたのは、5回や6回ではなかった。

都度夫はやんやの喝采だった。

もちろん、たくさんの咄家達の出入りする家で夫婦の会話も少なくいわゆる夫婦生活もなく夫はソープへ通っていた。

今や落語協会の幹部達は昔狼だった。

そこへもう一人

当時は携帯電話などない。

我が家の電話が鳴る。

私が取る。

「茂子か?俺だ」

「今浅草だがこれから高座だ…カニ食いに行こう!!」

夜8時人妻の出かけられる時間ではない。

「無理だよ!!」

そんな電話に夫を始め狼達も耳をすませている。

「ダメっていうのか?」

「ダメっていう顔している。」

「誰から電話かわかっているのか?」

「知らない。」

「だったら言え!!それでもダメだったらアイツは破門だ!」

私は仕方なく夫に「これから出かけて良い?」

「こんな時間に出かけて良い筈ないだろう!」

「やっぱりダメ」

ここらで全員耳をダンボ

「だから誰から電話か言え!!」

私は仕方なく「談志さんが出かけちゃダメなら破門だって」

一同固まる。

「その電話は師匠なのか?」

「違うよ!!」

一瞬ホッと

「談志さんだよ!!」

再び固まる。

私に取って師匠は小さん

談志は小さんの弟子の一人
「師匠をさん付けで呼ぶな、ため口きくな」

と説教された後「出かけて良い」と言われた。

私は電話の向こうの談志に「行っても良いって」

「当たり前だ!じゃあ浅草へ来い、カニ食った後銀座行くから遅くなるって言って出て来い。」

「わかった。」

私は部屋の一同に談志さんとカニ食って銀座行くから遅くなると説明して外出した。

3日に1回は「茂子か?俺だ!」と電話が入る。

楽しそうにため口で話すのでちょっと出かけて来るは恒例行事となった。

続く