派遣の階段 | 小林茂子オフィシャルブログ「生きてみよ、ツマラナイと思うけど」Powered by Ameba

派遣の階段

その後2ヶ月小規模な支店で、セールスと接客の在り方、行儀作法を教えた。


もう私はエプロンではなく、黒いスーツに身を包んだ『スーパープレイヤー』という訳のわからない称号で一年生指導にあたった。


初めての社会生活に戸惑い笑顔を忘れてしまった一年生もいた。

敬語が使えず、対人恐怖症になっていた一年生もいた。

一週間だけの、指導員は一年生に業務もさる事ながら人情を教え、謙譲の美徳を説いた。


いつからか、店頭指導に噂を聞き付けた何処の支店かわからない副支店長クラスが見学にやって来るようになった。


私を本部に引き抜いた上司は、良い意味で鼻高々だった。

ある時、元いた銀行の役員を通して直々に大店舗から一年生指導の要請が来た。

2ヶ月足らずで、初の試みの『一年生セールス、接客指導 』は有名となった。

私の指導した一年生はことごとく、銀行から何等かの賞を受賞していた。


それだけ後進を育成するのに渇いていた状態だったのだろう。


一年生達は、『研修で書いてあったが、使えないと思った敬語が自然と出て来るようになった』と喜び、『必ず守ってくれると信じられる!』と積極的にまた丁寧にセールスをして実績を重ねたから評価されない訳がなかった。

しかし、本部を飛び越え直接私に来た大店舗の一年生指導に上司は難色を示した。

その大店舗の支店長は役員であった。
役員であっても筋は通せ!という上司の気持ちもわからなくなかったが、大店舗には、それなりの人員とそれなりの一年生がいる。

『現場では、優秀な一年生が指導する暇が無いからと、雑用のみに追われています。一年生は金の卵です。一年生は銀行の宝です。』と私は難色を示す上司に抗議した。

大店舗での失敗も考慮して上司は発令しない。

『大店舗での失敗は、絶対にありえないから』と意味なく太鼓判をおした。

明らかなハッタリだった。大店舗の一年生が雑用ばかりで、クサっているのは有名な話しだった。


銀行に入って3ヶ月近く経てば、雑用だけでは空しくなるのもわからないではなかった。

ついに発令は出た。
この派遣の仕事をして5ヶ月目…充分勉強した。

優秀な大学を出て、選ばれし戦士達と闘う基盤は出来ていたが、大店舗に行ってみて…これほどクサっていたとは思いも寄らなかった。