派遣の言い分（フィクション）

茂子の怒りは派遣会社と刺し違える覚悟までになっていた。

元々銀行員魂に火が付き、駆け上がるように新入行員指導をし、派遣スタッフにも『銀行の名に恥じないように』との精神で働くように呼びかけてきた。

派遣制度には知識はない。しかし、派遣先の品位や対面を守るのに正社員も派遣もないと考えてきた。

そもそも正社員と遜色なく働くから派遣スタッフを高い時給で雇い、派遣スタッフも派遣会社に守られるから安心して働けるのかと思いきや…現実は、損の押し付け合なのか？

呑気な声で電話に出た鴻池に茂子は食ってかかるように『銀行が忘れていた所作、礼節を新入行員や派遣スタッフにと言いながら、何故メガホンなんですか！』
しかし、鴻池も『メガホン？なんですか？メガホンって』と要領を得ない。

怒り心頭している時に相手が要領を得ないと怒りの持って行き場を失う。

ここで普通の人は冷静になるが、途中訳も解らず派遣会社を異動させられた恨みもあるし、銀行には言わずに『責任転嫁』しようとする派遣会社に腹も立っているから、矛先が本部にも向いた。

派遣会社に従わせるのか、銀行本部に従うのか『一派遣スタッフですから判断できません。私は派遣会社に従うのですか？』と怒った茂子は電話で鴻池に詰め寄った。

訳のわからない鴻池は『待ってください。派遣会社に話しを聞きます。』と電話を切った。