派遣の言い分(フィクション)第14話 | 小林茂子オフィシャルブログ「生きてみよ、ツマラナイと思うけど」Powered by Ameba

派遣の言い分(フィクション)第14話

苦笑いで再び後ずさりという情けない形の茂子に、健康サンダルを履いた支店長はにじり寄る。

『すみませんでした。知らなかったんです。支店長だとは…忙しかったんで、つい』と低姿勢で話した。

逃げたくても逃げる訳にはいかない。

すると、健康サンダルは『大林さんは私の先輩です。』ときた。
『ん?』何を言いたいのか…いくら銀行が年次制度でも、かたや支店長で私は派遣スタッフだ。

『大林さんは高尾銀行に何年入行ですか?』と聞く。『入行は48年で退職は51年です。』すると『どちらに?』としつこい。

身元調査でもして見合いでも持って来るのか…の勢いだった。

『一応支店配属で、いろいろあって本部へ』と簡単に経緯説明した。
当時は女子行員の転勤は珍しく、すごい何かを持っているか~問題児くらいしか転勤はなかったように聞いていた。

差し詰め私は副頭取とは知らずに『おじ様、焼鳥取って』とやらかし、本部に招かれたから、どちらとも言えない。

『当時の頭取は?』と健康サンダルは聞くが忘れたのか、知らないのかも解らない。仕方なく『副頭取は…』と答えた。

『私はその方が頭取の時に入行しました。』だからなんでしょう?
もうシャッターが開く。
時給の派生する時間だ。

もうタンカを切った以上は成すべき事を成す。
いやそれ以上成して功なり名を遂げん!と弟に戒められてきた。

『仕事ありますので~』シャッターのゆっくり上がる音を合図に健康サンダルを無視してお客様を迎える体制を取った。

私の仕事は健康サンダルの相手をすることではない。
しかし、健康サンダルはめげずに佇んでいた。