派遣の言い分(フィクション) | 小林茂子オフィシャルブログ「生きてみよ、ツマラナイと思うけど」Powered by Ameba

派遣の言い分(フィクション)

手で追い払う姿勢を見せても支店長は茂子の元に笑顔で近づいて来る。

次第に追い詰められて、ハッと気づいた。

何も支店長が近づいたところで、何かされる訳ではなし~そう気が付くと態勢を立て直した。

『支店長とは知らなかったとはいえ失礼致しました。』素直に頭を下げた。

30年間銀行を離れている間に銀行も変わった。
また、その分茂子も年を重ねた訳だが、支店長は偉い!がイコールとなり年上という図式だった。

『いやいや、大林さん。今さら敬語は無しですよ!私だって言ったじゃないですかぁ~仕事ありますよ…と』(言ったじゃないですかぁ~ではない!私支店長です。と、はっきり言ってくれ)

茂子は黙って頷いた。
今日は、この支店の最終日だ。
早く逃げて帰りたかった。
しかし、支店長はまだ話したそうだった。

『大林さん、全てに見事でしたね!接客、セールス、購買力…うちの支店に貴女ほどの人間がいない。とくに~この辺、セールス力の根本から教えて戴きたいですね。』と、私が反感をかうような事を宣(のたま)わった。

『次も大林さんにお願いしたい。私から本部に頼んでおきますよ!』と言っていたが、『普通』を目指す茂子は内心『御免こうむります』と思いながら逃げ帰るように支店を去った。