:血の系譜 (行き倒れ)
翌日から三木助は池袋演芸場の特選会で寄席が10日間入っている。
寄席に入っているのを邪魔したくはないので連絡は取ってはいない。
相変わらず家に戻った様子はなかった。
初日寄席に来なければ前座の誰かから連絡があるのは事務所だろうから事務所に待機した。
初日、2日目と9時まで連絡が無いから寄席には行ったのであろう。
3日目の7時過ぎに電話は鳴った。
『もしもし』と出ると相手は前座ではない様子に少しホッとしたのもつかの間…
『えーっと、こちら警察ですが』
と始まり、弟の身体的特徴を述べられた後、
『その人がこの番号に電話して欲しいと言われかけている』
間違いない!三木助だ。
私は警察の前で倒れていたのは、弟と確信して収容された病院を聞き、タクシーで向かった。
応急処置室から弟の声が聞こえる。
しかし何を話しているかは解らない。
ストレッチャーで運ばれる横顔は、間違いなく弟三木助だった。
『お姉さんには会いたくないらしい』
と言われ、私は仕方なく医師に薬物検査をお願いした。
しかし、薬物検査もう済んでいるが異常はないと言われた。
それでは何故なんだろう。この訳の解らない日々。
今までの三木助にない尋常ではない、この様子に私はうろたえた。
当分入院加療の必要性を言い渡されて、私は入院の支度と小朝師匠への連絡のために病院を後にした。