血の系譜 （師匠）

平成１０年三木助の芸術祭受賞パーティーは行われた。

いつも事ある毎に押し寄せるマスコミもめでたい事にはあまり興味をそ

そられないようで、新聞社だけだった。

しかし三木助の師匠となる小さん師匠は父から託された指命を全うし

た事を心から喜んでいた。



（兄貴分の父と義兄弟の盃を交わした小さん師匠のツーショット）

父は死ぬ間際に小さん師匠の手を取り

『もいちゃん（父は小さん師匠の本名盛夫から小さん師匠をそう呼んで

いた）盛夫を頼む』

ややこしい話で恐縮だが、我が家小林、小さん師匠本名小林で、父は

弟に小さん師匠の名前の盛夫を付けた。

小さん師匠は私達が子供の頃からよく我が家に来ていた。

小さん師匠のおかみさんもよく家には来ていたが…母が小さん師匠の

前で

『盛夫！』

と怒ると小さん師匠がビクンとする光景を何度か見た。

弟が弟子入りしてから小さん師匠の印鑑証明を貰いに行った時申請者

小林盛夫、大正生まれだ。代理人小林盛夫でどう見ても大正生まれに

見えない。

豊島区役所の方は

『代理人の方は自分の名前をここに書いてくれ』

と代理人欄を指す。

しかし代理人も小林盛夫である。

結果印鑑証明は出たが紛らしい人は二度と来るな！と断られた。

もう一つはまだ弟が柳家小きんの時代にＮＨＫからのギャラが多額だっ

た。

小さん師匠との出演だった。

柳家小きん本名小林盛夫、かたや柳家小さん本名小林盛夫、小きん

と小さんではギャラが違う。

多分ＮＨＫのミスだろうが時効だろう。

弟は喜んでそのギャラを使った。

そんな弟を修業させて抜擢真打ちにもなり芸術祭も受賞した。

小さん師匠は三木助が芸術祭を受賞した事を大変喜んでくれた。

まさかＮＨＫのギャラのミスがあった事も知らずに。