久しぶりに読了した一冊は、読め進まない力作かつ長編の現在進行してるの2冊の間隙をついてこの週末に読み切った、井上靖が耄碌した母と長男靖氏を含む息子娘はては孫たちをも巻き込んだ奮闘記。

5年ごとの老いゆく母について、3部でその時点時点の母について。愛と葛藤、そして、人の老いとは、人の人生の最後とは、について考える井上靖の観察を交えた一冊。



母の思い出と介護奮闘記に留まらぬ、人間の老いとは何かを同じ人間の温かさも忘れず、けれど客観的に考察するあたり、さすがの井上靖。


読み始めは井上ひさしの作品と勘違い。

途中から川端康成とも錯覚して最後に、ああ、天平の甍の作家だな、と認識を正しくした大馬鹿者でした。


この本は、父が何冊かまとめて日本から郵送してくれた本の中に混ざっていた。


聴いてみると、以前映画でこの本を原作に役所広司と樹木希林の演じる作品を観て偉く感動したとか。


親父と、親父の母(つまり僕にとっての祖母)との関係はこれに似た奮闘と葛藤があったでしようから、俺が受けた読後の感想は親父のそれとはまた違うものだろうとおもう。


しかし、息子としての親父の気持ちが垣間見えたような気のした一冊でした。


ちなみに、祖母は3回ほど脳梗塞に襲われたものの一応は自力歩行し、また、一切ボケたりせず、96歳までだったかな、意識はっきりとしたまま、ホームの朝ごはんで食べながら周りが気づいたときには大往生していたとのこと。


たまたま一時帰国していた2019年9月にフライトの前々日、急に訃報に接して祖母が永眠したばかりの老人ホームに駆けつけた。


最後に会えたことは心残りをせずに済み、今改めてお別れできたことに対し感謝の気持ちになりました。