週末、有楽町の国際フォーラムにある「相田みつを美術館」に行ってきました。


国際フォーラム


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相田みつを氏は、みなさん、ご存知だと思いますが、心に響く詩と独特の書体が印象的な詩人&書家であります。

当日は、第59回企画展として、「花はただ咲く」をテーマに開催されていました。


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入口2
運よく、氏の長男でこの「相田みつを美術館」の館長である相田一人氏が息子の視点で父親を語るミニ講演を聞けたので、知りえたことをお伝えします。

まず、仕事の手順ですが、詩をつくりあげて、それから大きな用紙に書をしたため、納得のいったものが書けたら、自分で上下左右のバランスを見て用紙をカットし、その作品を専門家に装丁してもらっていたそうです。したがって、作品の額の大きさは同じものが無いそうです。

あのような書体なので、版画のように短時間に何枚も仕上げて、装丁していたように感じていましたが、実際は、何十枚、何百枚書いて納得した1枚だけ作品に仕上げたそうで、いつも紙くずの山をご自分の左右に積み上げていたとのことです。

結果、大量のごみが出すわけにはいかないことから、家で焼却処理をしていたとのことです。

また、納得いく作品がいつできるかわからないので、常に高級な清書用の用紙に書いていたことから、用紙代は相当な金額で、多い時は1日で当時の大学卒の初任給の1.5倍くらい使っていたようです(現在に換算すると30数万円くらいか)

このような、製作過程だったことから、60歳の時に詩集「にんげんだもの」を出版して注目されるまでは生活が苦しく、製作のあいまに地元の老舗の包装用紙をデザインしたりして糊口をしのいできたそうです。

そして特徴ある書体や配置ですが、伝えたいところを大きくあるいは太くしたり、列ごとの書き出しの位置を調整したり、全部ひらかなで書いたり、ほんの一部だけカタカナで書いて強調したり、縦横の空間の広さも測って決めるなど、さまざまな工夫を緻密に計算して、創りあげていたようです。

以上のようなお話を聞いた後、作品を観ていきましたが、もともと人に響く素晴らしい詩そのものに解説されたような視覚的な仕掛けが加わり、より魅力を引き出すことになり、大勢のファンができたのだと感じました。

また、今回の企画展の作品は「人間のわたし」という視点から、対極にある「ただ」という純粋な世界への強烈なあこがれとの両極のあいだでダイナミックに揺れ動きながら生まれていると述べられています。

氏の作品がさまざまな事象を両面(対極)から観て書かれているからこそ、いろんな方から共感を得ているのだろうなと強く感じた次第です。

それから、若いころの書を観てもわかるのですが、氏は書の最高峰の一つと言われる毎日書道展に7年連続入選するなど技巧派の書家として出発しているだけあって、字は端正で達筆であります。上手に書ける技巧があるからあのように崩しても味がある文字になるのだなあとも感じました。

皆さんも機会があったら、ぜひ、訪れてみてください。