そして恋が降ってきた【後編】

<第四十章>プロローグ~健太からの手紙~

 

 

翔がカナを連れてBAR TAKEFIVEに訪れた時

マスターから手紙を渡された。

 

健太からだった。

 

しっかりとした濃い字で

“翔さんへ”と書いてある。

 

「ねえ、なんて書いてるの?」

カナに聞かれて、

翔は中身を取り出し、読み始めた。

 

 

『翔さんへ

 

このたびはたいへんお世話になりました。

初めて東京へ行った日、

翔さんが

「健太はお父さんさがしたい?」

と聞いてくれたおかげで

お父さんに会うことができたし、

新しいお父さんも、お母ちゃんの恋人も

見つかりました。

 

それもこれもみんな

おじぞうさんのかわりにぬれた僕

ではなく(笑)

 

翔さんの、おかげです。

 

本当にありがとうございました。

翔さんも、カナさんと幸せになってください。

 

健太より

 

ついしん>カナさんと万が一

お別れするようなことがあったら、れんらく下さい。

 

ぼくがカナさんの恋人に立こうほします。』

 

 

 

 

 

「・・・・時々笑いも入れてきやがる。

あいつ本当に賢いな。」

 

翔が少し、涙目になりながら言う。

「泣いてるの?」

と、カナが聞くと彼は少し赤くなった。

 

「泣いてねえよ。

大の男がこれ位で泣くかよ。」

 

あさってのほうを見てごまかす翔が

可愛く見えた。

 

「・・・・それにしても、最後の一文は何だよ。

生意気なヤツだな。」

 

翔がぶつくさ言うと、

 

博之が「カナさんが、タカヒトさんではなく

翔さんを選ばれていたので、

カナさんは面食いではないから、自分にも

チャンスがあるのではないかと言ってました。」と返した。

 

それを聞いて、カナが大笑いする。

 

ムッとした顔で翔が

「マスター、あいつに言っといてよ。

俺は死ぬまで、カナちゃんを離しませんからねって。」

と言って、ちらりとカナを見ると、

彼女は、はにかんだような笑顔になった。

 

「母さんの具合も落ち着いたし、そろそろ日取りを決めないとな。

マスターに先越されちゃったし。」

翔が笑う。

 

「内田さんが、高木さんになったように

私も奥山香奈から、中野香奈になるんだね。」

少し照れくさそうに、

でも幸せそうに、カナも笑った。

 

 

 

人の縁って本当に不思議だと

博之は思っていた。

神様の采配は、時に意地悪だけど

人生、捨てたもんじゃない。

 

誰かを好きになることなんて、諦めていたのに、

こうして降って沸いたように

心を動かされ、

自分では思いもよらぬ行動を、取らされてしまう。

 

今回は三人の幸せを願う人たちの想いが、

ちょっとしたドラマを生んだ。

 

優しい温かい気持ちが

集まって、雲のように密集すると

それは、雨のように降ってきて、

疲れた頑なな心を溶かすのだ。

 

 

 

バーカウンターに座って、

見つめ合う二人を眺めながら

博之は家で待つ二人の事を、考えている。

 

 

トモコと健太が待っている、と思うと

それだけで、博之は幸せだった。

 

 

 

 

 

そして恋が降ってきた ~完~

 

 

 

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