そして恋が降ってきた【後編】

<第三章>博之の激高

 

 

日曜の夜、翔は

カナを連れて博之の店へ行った。

 

「マスター、タカヒト君に聞いたけど

トオルくん夫婦が、

健太を引き取りたがってるらしいね。」

 

「そうなの?」

カナがビックリして言った。

博之は黙って、翔の話を聞いている。

 

「なんで急にそんな話に?」

カナが尋ねた。

 

「それがさ、トオルくんが健太と会ったとき、

マスターとトモコさんの二人が夫婦だと思って

気にも留めてなかったらしいんだけど、

あの後、興信所で調べたらしくて。

トモコさんが、今もシングルマザーだって事を知ったら、

健太くんにとって、“普通の家庭”で暮らすことが

プラスになるんじゃないかって、言い出したんだって。」

 

途端にカナの顔色が、変わった。

 

「ちょっと、“普通の家庭”って何よ!

トモコさん、あんなに頑張って

健太くんを育てたじゃない!!」

 

カナが怒りに任せて、カウンターを両手で叩いた。

壊しかねない勢いだ。

「マスター、何とか言ってよ!」

 

博之は黙り込んでいるが、

そっと翔が彼の顔を覗き込むと、

怒りの表情だった。

 

「・・・・トモコさんの努力を、

なんだと思っているんだ。」

静かに博之が言った。

 

彼のそんな表情は、カナですら見たこと無かった。

 

彼は本気で怒っていた。

 

来客が他に無いので、

翔は、トモコへ電話をかけて様子を聞くことにする。

 

「トモコさん、大丈夫?」

しばらく話したあと、

彼は、博之に電話を渡した。

 

 

 

 

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