いばら姫LOVE AGAIN

 <第二十一章>呪いを解く魔法

 

 

ユウにキスをされたとたん、

雅の中で失われた時間が

突然巻き戻るのを感じていた。

 

音のような速さで、記憶が戻っていく。

 

 

頭の動きに身体が付いて行けず、

雅はユウにしがみついた。

 

それを肯定と取ったのか、

彼のキスがどんどん深まっていく。

 

 

白昼堂々、病院の中でキスをするなど、

ユウにはあり得ないことだった。

 

ユウはシャイで、優しくて、内向的な人で

人前に出るタイプではない。

 

 

 

彼の中で、ずっと抱えていたモヤモヤがあるのは

雅も理解していた。

けれど彼女には見守ることしかできなかった。

「俺なんて、居なくていい。」と

彼が突然マンションの渡り廊下から身を乗り出したとき、

雅も怖かったけど、

一緒に乗り越えた。

 

そうすれば思いとどまってくれるのではないかと

思ったからだ。

だが、そこでもみあって、

転落したのは雅だった。

ユウは“信じられない。”といった表情で

雅が落下するのを見ていた。

 

「死ぬな!!」

力の限り叫んだユウを見ながら、

“私は死なない。”と、雅はなぜか確信していた。

 

 

 

合わせられた唇が離れると、

ユウは

「雅。」と、彼女の名を呼んだ。

 

雅は目を見開いた。

記憶の中の夫の顔と、ユウの顔が重なって一つになる。

 

「ユウ、私ね、全部思い出した!」

彼女はやっとの事でそう言ったが、

再びあの激しい頭痛に見舞われていた。

 

雅はユウの腕の中で、

ゆっくりと意識を失っていった。

 

 

 

 

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