いばら姫LOVE AGAIN 

<第二十三章>呪いが解けて

 

 

「全部思い出した!」

と雅は言いながら、ユウの腕の中で意識を失った。

 

彼は慌てて、彼女を抱えたまま

看護師を呼んだ。

簡易ベッドに乗せられた彼女が、

運ばれていくのに彼は付いていく。

 

 

“全て、思い出したのか。”

それならば、もう腹をくくるしかない。

 

再び雅が意識を取り戻すまで、

彼はずっと付き添うつもりだった。

 

「山中さん、奥さんの命には別状ありませんよ。」

医師はユウにそう告げると、

ため息をついた。

「ここは病院なので、あまり刺激的なことは

慎んでくださいね。」

 

・・・・・さっきのキスのことだ。

 

「・・・・はい。」

ユウは耳まで赤くなりながら、言った。

「すみませんでした。」

 

「まあ、魅力的な奥さんですから、気持ちは分かりますけど。」

医者が笑う。

ユウはムッとしていいのか、

笑っていいのか分からずに黙っていた。

 

彼が黙っていると、医者が口を開いた。

「・・・・自殺未遂は大変な事と思いますけど、

これも何かのチャンスだと思って

お二人で新しく人生をやり直したら、どうですかね?」

 

「へ?」

ユウは医師を見た。

「うちね、妻が育児ノイローゼで鬱になったんですよ。」

 

「・・・・。」

 

「私がそれに気付かずに、仕事にかまけて放置したら

とうとう入院する羽目になってしまいましてね。」

黒縁めがねの奥が、やるせない表情になった。

 

「ようやく彼女が回復したなと思ったら、

今度は他の男と、娘を連れて出て行きました。」

 

「それは・・・・」

その後に続く言葉が思い浮かばない。

 

下手をすると、自分も同じ様な立場だったと思うと

変な汗がでた。

 

あの会社の若い男の押しの強さに、

雅が負けないとも限らない。

 

「山中さんのところは、ちゃんとお互いに想いあってるから

大丈夫です。

手遅れにならないうちに、きちんと気持ちを伝えてくださいね。」

彼の目は真剣だった。

 

ユウはしっかりと頷いた。

 

 

 

 

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